あまり語られることのない加藤和彦のソロ作品、 ことに79年の『パパ・ヘミングウェイ』から 91年の『ボレロ・カリフォルニア』に至る 圧倒的な作品群の魅力を少しでも多くの方に知ってもらいたく コンピレーション『優しい夜の過ごし方』を作りました。 11月13日から伊豆仁田のカフェirodori で始まる weekend books のイヴェント「古本とケーキとお茶Ⅱ」に相乗りさせてもらい 14日の土曜と15に日の日曜にご希望の方に差し上げます。 是非いらしてお申し出下さい。 数に限りが(かなり)ありますのでお早めに。 これを機会に加藤和彦の世界に親しんでいただけるようになれば幸いです。 さて内容はと申しますれば 『ボレロ・カリフォルニア』 編曲にニック・デ・カロを起用してふんだんにラテン・リズムを使った本作は 古いハリウッド映画の一場面を切り取ったようなカラフルな歌謡の世界。 ”ジャスト・ア・シンフォニー” カーニバル・サンバの軽快なリズムと 観光地の絵葉書みたいに平べったいストリングスの 不思議な、でも幸福なマリアージュ。 今となっては「夢はいつどこで終わりをつげたの」という出だしに 聴く度に泣かされる。 ”三時にウイスキー” 「ウイスキー、ハスキー、運命はリスキー... ウイスキー、ハスキー、午后のチャイコフスキー...」 くっきり韻を踏んだことば遊びの背後に潜んだ 恋の駆け引きと人生の綾を膨らませるメロディがとても歌謡的。 ”愛のピエロ” 軽やかなカバキーニョの響きに導かれて始まりながら やがて聴き手の胸をえぐるのは 長谷川きよしにも似合いそうな落日のサンバ・カンソン。 ”ピアノ・バー” 思い出されるのはカルロス・ダレッシオの”インディア・ソング”。 遠くで鳴る拍子木のようなクラベスの音の寂しさと遣る瀬なさ。 『ヴェネツィア』 語られる機会の意外に少ないアルバムだけれど 当然のことながら佳曲がたっぷり詰まっている。 ”ハリーズ・バー ” 失ったひととの暮らしをひとり想うハリーズ・バー。 加藤和彦にしてみれば安井かずみを失う数年後の自身のこころ模様を 安井かずみにとっては自分の不在が彼にもたらす風景を 皮肉に先取りしてしまったかのような内容で 彼まで失った今、聴く度に涙腺が緩む。 ”ヴェネツィア ” 恋に落ちてさまよう追憶のマスカレード。 こんなデカダンなレゲエ後にも先にも聴いたことがない。 ”真夜中のバレリーナ” シフォンのチュチュって何?連れあいに訊きました。 バレエの必需品なのですね。 ピアノのトレモロ。回転木馬のワルツ。 歌のある”ジュ・トゥ・ヴ ” 『マルタの鷹』 セールス的に最もふるわなかった作品。 個人的にも馴染むのに時間がかかった加藤和彦的ジャズ。 今現在の愛聴盤。 ”ディッセンバー・ソング” 君のにおいはいつもフレンチ・ラヴェンダー。 トランペット、ピアノ、ギターとベース。 ジャズ以上にジャズらしいフェイク・ジャズ・歌謡は 落ち葉の敷き詰められたセントラル・パークの冬景色。 走り去るようなコーダがたまらなく粋で格好良い。 『あの頃マリー・ローランサン』 都市的短編小説集の洒落た趣きが前面に出ているけれど 抑えの利いた表現ながらビートに捧げる意欲が満ち溢れてとてもダンサブル。 矢野顕子(ピアノ)と坂本龍一(オーケストレーション)の 仕事ぶりがとにかく楽しげ。 幸宏のドラムも最高。 ”ニューヨーク・コンフィデンシャル” 密かなラテン風味にウイリー・コローンの幻を見る想い。 ”優しい夜の過ごし方” ワインでは彼女の不在が一層際立つし ひとりの暮らしにはウイスキー・ソーダがお似合い。 ”ラスト・ディスコ” 君のにおいはいつもガーデニア。君の匂い...は安井かずみの好んだフレーズ。 ラヴェンダー、ガーデニア/くちなし、ダフォディル/水仙など 花の名前もお気に入り。 ”テレビの海をクルージング” カリブの風に微かに混じるファンクの香り。 キッド・クリオールのラテン・ファンクにも通じる香り。 『ベル・エキセントリック』 おそらく偶然も含めてすべての要素が 希有な傑作に向かって押し上げる方向へ作用した 特別に特別な一枚。 一度でもここまで到達してしまった事実は この後彼を苦しめることがなかったろうか。 あまりにそれ自体で完結した世界故他の作品との親和性を欠くようで ここでは一曲のみセレクト。 ”ロスチャイルド夫人のスキャンダル” トノバンの用意した舞台でsakamotoの才能が爆発して 自身のどの作品を見渡しても見当たらないようなプレイが乱舞する。 踊るに踊れぬ背徳のワルツ。 『うたかたのオペラ』 ベルリン録音ということで暗い印象を持っていたけれど 意外に明るいメルヒェンの世界だった。 ”ケスラー博士の忙しい週末” 倒れるまで踊りたい 世界で一番典雅なスカ。 ”ソフィーのプレリュード” 加藤和彦と佐藤奈々子。 微睡みの王と女王によるいまは亡き女神のためのパヴァーヌ。 または弛緩したレクイエム?。 世界一眠たいデュエット。 『パパ・ヘミングウェイ』 優雅な二枚の助走期間を経て 安井かずみと加藤和彦の誰も追いつけない止められない 優雅なボニーとクライドみたいな疾走はここから始まった。 ”アラウンド・ザ・ワールド” 70年代後半のポスト・パンクのスカ・ムーヴメントにインスパイアされ イギリスのバンド「セイラー」の楽曲(”ガールズ・ガールズ・ガールズ”)を 下敷きにして出来上がった曲に ”アラウンド・ザ・ワールド”と名付けるセンスがいかにもこのひとらしい。 ”ジョージタウン” 30年前にはじめて曲名を見たとき 吉祥寺かと思ったジョージタウン、全然違った。 ”メモリーズ” 空と海がひとつに溶け合うところ。 スティール・パンが遠い記憶のように響いては消えていく。 ロクシー・ミュージックのアルバム”アヴァロン”の終章を飾る”タラ”は ブライアン・フェリーがこの”メモリーズ”のリプライズを手本にしたのだ と勝手に思っている。
by miracle-mule
| 2009-11-11 01:27
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