スコット・ウォーカーの神話的世界

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スコット・ウォーカー / ティルト
Scott Walker / TILT

過去の人扱いしたこと。
今や巨大な音楽家であるのを知らずにいたこと。
スコット・ウォーカーという人をきちんと評価しなくちゃ
と言った自分が全然分かっていなかった。
彼に出会い直したおかげで大変な年の瀬を迎えている。
21、21、21という歌声が耳について離れない。
讃歌のようにも呪文のようにも聴こえる95年のこの特異な作品は
心の中の馴染みのない辺土にあかりを灯し聴き手を導く。
この音楽はいったい何なのだろう。
頭いっぱいに立ち籠めやがて全身を満たすこのもやもやしたものは何だろう。
気持ちの良さと悪さの別がとてもつけづらく
宙づりにされた感じが終いにはやっぱり気持ち良い。
せっかく特異なものに出会ったのだからそれはそれとして楽しめれば良いのだが
凡夫の哀しさで少しでも似たものを探して分類しないとやはり落ち着かない。
音の素材選びや処理の仕方そして文学の趣味は
T ボーン・バーネットの近作
混沌とした手触りはPILの”フラワーズ・オブ・ロマンス”やパリでの”ライヴ”に近いかもしれない。
が、本作をこれらの作品と決定的に隔てているのは
やはり世界の何処を見渡しても例のなさそうなスコットの声だろう。
若い頃に比べれば声量も落ちたようだし安定感も欠いてはいるが
気高さを増した孤独な歌声は北の海を照らす灯台のようだ。
グロテスクなところもありながら
通過するとどこか浄化された気がして来るこの音の構造物は
足を踏み入れる度に精神の修復と再生を促す
(重厚なエレクトロニクスの響きと
ハーディ・ガーディやツィンバロンといった繊細な手触りの古楽器の響きで
巧みに組み上げられた)
人体の内部に似た音の神殿みたいだ。
DVD”30センチュリー・マン”の発売は新年1月15日。
楽しみ。

スコットのトピックだけでできてる凄いブログを発見。
お勧めです。
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by miracle-mule | 2009-12-26 23:58 | 新着CD
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