シンプリシティ

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デヴィッド・シルヴィアン / マナフォン
David sylvian / Manafon

この八ヶ月聴き続けて2009年のベストはこれに変更することにした。
まずその歌声と歌唱が素晴らしい。
ジャパンの時代からブライアン・フェリー・フォロワーとして
敢えてわざとらしいヴォーカル・スタイルをを崩さずに来た彼だが
幾分声が枯れてきたことも手伝って独自のスタイルとして実に自然に響く。
落ち着きのある、ひとを安堵させるいい声になった。
その声が徹底して脂肪をそぎ落としたメロディ、
メロディがそれとして成り立つ最低限の起伏しか持たされていない
シンプルの極みのようなメロディにのせられている。
ひとつの曲の成分としてのメロディは少なくて済むのなら
より少ない方が良いのじゃないかと近頃思う。
その方がとっつきは悪いけれども奥行きも深みも増すし胃にもたれず飽きがこない。
メロディ・メイカーというのは必ずしも褒め言葉とは限らないのだ。
メロディ作りの職人には生み出し得ないメロディがここにあります。

演奏は決して伴奏として歌に仕えず
コードの拘束からもするりと身をかわす身軽さで
ヴォーカルとまたは楽器同士で対話したり戯れたり。
不意に現れては消える様はラップ現象のようだけれど
身勝手好き勝手な自己主張とは無縁な
洗練を積み重ねた末に生まれたもの。
そんな歌と演奏の組み合わされたこの作品の中で
最も雄弁なのは音と音の距離であり
たっぷり確保された無音の時間かもしれない。
本当に大事なことは僕たちの目からは隠されているものだから。
その「間」と「静寂」は琵琶法師の語りや能、俳句が身近にある日本人には
案外親しみやすいものだと思うのだけどどうだろう。
スコット・ウォーカーの"tilt"と並び立つ大傑作。

Small Metal God
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by miracle-mule | 2010-08-25 23:39 | アーカイヴス
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