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マイルスの酩酊ファンク



Miles Davis / On the Corner
マイルス・デイヴィス / オン・ザ・コーナー”

猛威をふるった”ゴー・ウエスト”の嵐もあっさり西の彼方に去り
今はこのファンクなマイルスが家で車内でガンガン鳴り響いている。
リメイン・イン・ライト”をひっさげて来日したデイヴィッド・バーンは
マイルスのこの”オン・ザ・コーナー”を
ヘッド・フォンで聴き続けていたのだそうで
なんだか凄くうなずける話なのだが
よりイーノの色が濃いバーンとイーノの共作”ブッシュ・オブ・ゴースツ”は
テープ編集に重きをおいたプロダクションという共通項もあって
さらに手触りが近い。
この二作に聴き惚れていた80年当時にそれがわかっていたら
ここ30年ほどの自分の音楽の旅もずいぶん色合いの変わったものになっていたと思う。

一曲目の頭から途切れることなく突き上げるビートとうねるドローン、
切り裂くようなギターとからみつくワウワウ・トランペットのおかげで
五十何分間ずーっと酔いっ放し。
腰に来るファンクなノリと頭の芯を麻痺させるミニマルな反復がもたらすふらつきたまらなく気持ち良く
ついまた頭から聴き始める体たらくだ。
もの凄くたくさんの音がつめこまれていても
無駄な音がまったくない。気がする。
音と音の間の緊張感は引きちぎられる寸前のロープみたいだのに
このただ事でない和み感は何でしょう。
何十回聴いても一向にメロディが頭にはいらないけれどまるで気にならない。
そんな意味ではこのアルバム、
ラップやテクノの世界にも大きな恵を与えていたのかもしれない。
72年の発表当時こんなものを聴いていたジャズ・ファンからすれば
ロックを聴いてる連中が気の毒に思えたかもしれないけれど
ほとんどのジャズ・ファンからはそっぽを向かれたそうだから
世の中は皮肉で面白い。
ニュー・ブラック・ミュージックと呼んで評価してたのは
中村とうようさんくらいじゃなかったろうか。
ああせめて80年代のうちに出会いたかったなあ。

それにしてもタイトル・トラックのマクラフリンのギターの格好良いこと。
”火の鳥”の頃とは大違い、な気がする。
by miracle-mule | 2012-03-20 03:45 | 新着CD
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