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男子の絵本 その2 

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ドナルド・ホール 文、バーバラ・クーニー 絵
もき かずこ 訳/ にぐるま ひいて

クリスマスにうちの奥さんにもらった絵本です。
以前お百姓と農家は違うものなのだと友人が教えてくれました。
お百姓の姓は生業のことで
すなわちとてもたくさんの種類の仕事をこなす人たちを
百姓と呼んだということです。
農家がほぼ農業専門なのに対しお百姓はできることはなんでもやって
生計を立てていたのです。
これはかつてのアメリカ東部のそんなお百姓さん一家の一年を描いたお話です。
父親も母親も今とは違って大人らしい大人です。
子供たちは親の愛玩物ではなく
家計の一端を支える家族というチームの立派な構成員としての誇りを持っており、
父親も彼らに一定の敬意のようなものを払っているようです。
屋根板を切り出し
亜麻をリンネルに仕上げ
リンネルに刺繍をし
白樺からほうきを作り
ろうそくを作り
かえでの樹液からかえで砂糖をつくり
羊の毛を刈り取って織物をつくったり編み物をしたり
野菜をつくったり。
それぞれがそれぞれの役割を果たします。
そして皆自分のしていることが何になるのかはっきり自覚しています。
ただそれだけの話。
でもイマジネイションの手をかけてやれば百の物語に育つ種が含まれています。
東欧のイコンやアメリカの古いプリミティヴ・アートのように
木版に描かれたバーバラ・クーニー絵が
そうした姿をニュー・イングランドの冷たい空気の中に
くっきりと浮かび上がらせています。

こうういう話や絵に出会うと
アメリカというのは”歴史の豊かな”国だと思わずにいられません。
奈良や平安の昔までさかのぼることはできませんが
国取りの勝った負けた取った取られたとは違った
市井の無名の人たちの歴史が断絶なしに今につながっている。
普段の生活の中に歴史が息づいていてちょっとうらやましい。
by miracle-mule | 2008-01-12 03:08 | 本の棚♦♦棚の本
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