カテゴリ:アーカイヴス( 61 )

素数の行進

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緊張と弛緩はひとつながり。
地平線まで続く素数の行進を眺める心地。
アルバム・カヴァーのイラストがセンダックに見えて仕方ないのだが
本当のところ誰なんだろうか。


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by miracle-mule | 2013-12-14 02:32 | 未分類

あこがれとしての



大貫妙子 / Aventure

ある時代との
青春期との
季節との
希望との別れ。
オマージュとしての
自立としての別れ。
映画や本を通して大貫妙子の中に流れ込み育まれた
「あこがれとしての別れ」の物語。
こういう世界をこの時代に継承しているひとっているのだろうか。
いるのなら是非聴いてみたいな。

81年のリリース当時すでに時代遅れでミスマッチに思えたホーンを多用した前田憲雄のアレンジが今カラフル、ゴージャスで
才気を爆発させていた加藤和彦や坂本龍一のそれに
負けず劣らず小粋に聴こえる時の流れの不思議。
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by miracle-mule | 2012-08-02 00:15 | アーカイヴス

匙加減

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Stan Campbell / Stan Campbell
スタン・キャンベル / スタン・キャンベル

流行というのはあっという間に過ぎ去るものだけど
まったく時代の刻印のない音楽が時代を超えるともまた思えない。
どのような時代でもその時代なしに次の時代は存在しないのだから。
時代を正しく纏った音楽は一時古臭く思われることがあっても
折りに触れて必ず復権するものだ。
時代遅れになることを回避することを第一義に時代の音を避退ける態度は
その姿勢ゆえに普遍性を自ら遠避ける。
この十数年最も敬遠されてきたのが80年代後半の
ドットの粗いデジタルなサウンドなのは間違いないところなのだが
その時代の音だからという括りでアウトと決めつけるのも
流行りの音に踊らされるのとまた同じ態度で
バランス感覚に優れ匙加減を熟知したアーティストは
当然のことながらこの時代にだって少なからずいたのだ。
そういう意味で忘れてもらいたくないのが
このひとのスペシャルAKA離脱後の最初にして最後のこのアルバムだ。
ソウルでカリビアンでラテン・ラウンジでレゲエな構えの曲群が
ポール・ウェラーのノリを良くしてコステロを除湿したような歌声と
デジタルとアクースティックの絶妙にブレンドされた音で描かれ語られる様の
氷の浮かんだぬるま湯に身を浸すが如き心地よさ。
UKソウル、87年の金字塔です。
名曲"Seven More Days" "You'll Never Know"
さらにありがたくもあの'Strange Fruit"を収録。


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by miracle-mule | 2012-07-26 02:03 | アーカイヴス

センチメンタリスト

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ミック・ロンソン / プレイ・ドント・ウォーリィ
Mick Ronson / Play Don't Worry
 
日常の足場を浸食するようなスリルを持った音楽が
目下一番の関心事ではあるのだが
見たこともない光景こそ見せてはくれないものの
世間の約束事をしっかり守ってその枠の中でアイデアと技術の粋を凝らして
見覚えのある物語の中へ誘い泣かせ笑わせ腰を揺らせてくれる
そんなタイプのポップミュージックももちろん大好きだ。
かつての相棒ボウイがポップと芸術のあわいを住処として
商業的手にも大きな成功を収めたのに対して
ロンソンはポップの領域に留まって売れないながらもとても良い仕事をした。
時おり轟音やノイズも轟き渡るのだけれども
それが聴き手の意識を見知らぬ場所へと導いたりすることはない。
その代わりに馴染んだいつもこの場所へ
ロマンティックな電気仕掛けの微睡みみたいな時間をたっぷり運んで来てくれる。
ロシア〜コサックな縦ノリがウッハ、ウッホとご機嫌なビリー・ポーター
ルー・リードの”ホワイトライト・ホワイトヒート”は
この曲の何処にこんな親しみやすい旋律が隠されていたのかと驚くほどメロディアス。
第一級のセンチメンタリストとしての資質が爆発的に開花した
"ディス・イズ・フォー・ユー ”と
エンプティ・ベッド ”(ルチオ・バティスティ!)を聴いてほしい。
もうあなたのベッドはもらい涙でびしょ濡れだ。
センチの海に溺れたい時にこの二曲を流すのなら
僕はいつでも喜んでお伴して一緒に涙を流しましょう
っていう感じ。
そして大声で支持したいボーナストラックの”ストーン・ラヴ”
ご存知ボウイの”ソウル・ラヴ”(ジギー・スターダスト収録)を
スカ&カントリー・スタイルに仕立て直した珍品だがこれが滅法気持ち良い。
どんなに塞ぎ込んだ時でもこの曲がかかったなら
まず軽く顎が上下し始め次いでつま先がビートをとり
ついには傷んだ腰もシェイク・シェイク・シェイク。
スカとカントリーという意外なマリアージュで
こんなにウキウキになれるなんて全然知りませんでした。
75年リリースの全然売れなかった無念かつ極上の第二作。
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by miracle-mule | 2011-04-27 18:12 | アーカイヴス

Kopyright Liberation Front

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KLF / ホワイト・ルーム
The KLF / The White Room

The KLFの”ホワイト・ルーム”をまたぞろしつこく聴いている。
ステロタイプな展開と
上手だけれど心振るわせることのない「ソウルフル」なヴォーカル、
安っぽい邪教的舞台装置からなるKLFの世界は
とうに焼け野原になった瓦礫の街に鳴り渡る空襲警報みたいに空しくて
どうにも誉められたものじゃないはずなんだけれど
そのわざとらしいこしらえに妙に惹かれて抗い難い。
聴いていたってどこに辿り着きそうもない雰囲気ばかりで空っぽな
でも過剰に美しいメロディと
ケレン味たっぷりなSEが
聴き手を鏡張りの部屋の如き音響空間に閉じ込めて離さず異様な酔いに導く。
安い酒でもひとは気持ち良く酔える、こともある。
そこのところが何かに似てると思ったら
ああ..Was(not Was)でした。
それは好きなワケだわ。
"Justified and Ancient"
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by miracle-mule | 2010-11-18 01:06 | アーカイヴス

シンプリシティ

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デヴィッド・シルヴィアン / マナフォン
David sylvian / Manafon

この八ヶ月聴き続けて2009年のベストはこれに変更することにした。
まずその歌声と歌唱が素晴らしい。
ジャパンの時代からブライアン・フェリー・フォロワーとして
敢えてわざとらしいヴォーカル・スタイルをを崩さずに来た彼だが
幾分声が枯れてきたことも手伝って独自のスタイルとして実に自然に響く。
落ち着きのある、ひとを安堵させるいい声になった。
その声が徹底して脂肪をそぎ落としたメロディ、
メロディがそれとして成り立つ最低限の起伏しか持たされていない
シンプルの極みのようなメロディにのせられている。
ひとつの曲の成分としてのメロディは少なくて済むのなら
より少ない方が良いのじゃないかと近頃思う。
その方がとっつきは悪いけれども奥行きも深みも増すし胃にもたれず飽きがこない。
メロディ・メイカーというのは必ずしも褒め言葉とは限らないのだ。
メロディ作りの職人には生み出し得ないメロディがここにあります。

演奏は決して伴奏として歌に仕えず
コードの拘束からもするりと身をかわす身軽さで
ヴォーカルとまたは楽器同士で対話したり戯れたり。
不意に現れては消える様はラップ現象のようだけれど
身勝手好き勝手な自己主張とは無縁な
洗練を積み重ねた末に生まれたもの。
そんな歌と演奏の組み合わされたこの作品の中で
最も雄弁なのは音と音の距離であり
たっぷり確保された無音の時間かもしれない。
本当に大事なことは僕たちの目からは隠されているものだから。
その「間」と「静寂」は琵琶法師の語りや能、俳句が身近にある日本人には
案外親しみやすいものだと思うのだけどどうだろう。
スコット・ウォーカーの"tilt"と並び立つ大傑作。

Small Metal God
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by miracle-mule | 2010-08-25 23:39 | アーカイヴス

ウォルフィ

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グレン・グールド / モーツァルト:ピアノ・ソナタ8.10.11.12.13.15番

無知ゆえに言えることだけど
グールドを通して聴くモーツァルトは
軽やかで流麗でといった一般に流布しているイメージよりも
重心が低く戯れもせずどこかノイジーでずっとバッハに近い。
なめらかな曲線はほとんど見当たらず
カーブは伊藤若冲みたいなコツコツした小さな升目で描かれて
なにやらコンピュータの基盤のよう。
8番のアレグロ・マエストーソや10番のアレグロ・モデラートでは
暴走列車みたいに突っ走るのに
11番のトルコ行進曲(ロンド・ア・ラ・ターク)は異様にスローで
トルコ兵はもうくたくたである。←これだけでも聴いてほしい。
モーツァルト好きの先入観を嘲笑い好奇心に火を点ける
ウォルフガングというよりはウォルフィと呼んでみたくなる
ユーモアに富んだグールドの痛快な一枚。
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by miracle-mule | 2010-06-23 22:47 | アーカイヴス

気まぐれ女

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ビル・エヴァンス / イエスタデイ・アイ・ハード・ザ・レイン
Bill Evans / Yesterday I Heard the Rain

なんとか感じを掴もうとこちらから迎えに行っても
まことにつれない素振りなのに
これは無理だわと肩を落としていると
向こうから飛び込んで来たりする。
ポップ育ちの我が身にとって
ジャズと付き合うのは気まぐれ女の尻を追うような(この部分空想)
90%の気苦労と9%のスリルと1%の悦楽がある
..あるはずだ。
昨日と同じCDをかけても今日同じところで胸が騒ぐとは限らないけれど
今日の一カ所を起点にしてオセロの駒のようにすべてが一気に裏返って
輝き始める時の心持ちはやはりこんな風に喩えるしかない気がする。
ビル・エヴァンスのこのアルバムでも
耳がピクンと来る曲、瞬間はいつも異なる。
今日も聴かぬ振りをしながら聴くともなく聴いていると
捕まえに来たのは"What Are You Doing the Rest of Your Life?"だった。
スコット・ウォーカーも歌ってたミッシェル・ルグランのあの曲だ。
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by miracle-mule | 2010-04-19 02:38 | アーカイヴス

レイラ、その後

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ボビー・ウィットロック/ ベルボトム・ブルース
Bobby Whitlock / It's about Time

なんとも雄大で暖かでおおらかな歌声。
かつてエリック・クラプトンとともに名作”レイラ”を残した男の歌は
ミシシッピ河口のデルタの肥えた土地のように
ブルースの、ゴスペルの、カントリーの、
幾度にもわたる洪水のおかげで
栄養分をたっぷり蓄えた肥沃な音楽の大地そのものだ。
どこを掘り返しても
腰に電流が走り
みぞおちがチリチリして
最後にソウルが焦げて来る。
07)スタンデイング・イン・ザ・レイン、11)ベルボトム・ブルースの裏声に滲む隠しようもない哀愁に涙また涙の99年出色のサザン・ロック。

ベルボトム・ブルース をクラプトンとの共演で。
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by miracle-mule | 2010-03-22 00:16 | アーカイヴス

おとなの世界

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浜田真理子 / ラストダンスは私に

EP,"Love Song"の二曲目。
昔、TBSの歌のグランプリかなんかで
意味も分からず聴いていたこの歌。

「...だけど 送って欲しいと 頼まれたら 断ってね」

生のベースだけをバックに淡々と響く浜田真理子のアルトと
岩谷時子の訳詞の上品な言葉遣いにすっかり騙されていたけれど
よく聴けばこれは脆弱な自分などがまともに向き合えるような
生易しい世界のものではなく
情念渦巻くおとなの世界の話であった。
歳だけでいえばこれより上は年寄りばかり
というくらい十分おとななはずの私だが
昭和の歌謡曲が好んで描いたおとなの世界にはついぞ縁のないまま。
浜田真理子の歌謡性は未熟なおとなを
成熟したおとなの世界へ易々と運び遊ばせる。
いつ”アンダー・ザ・ボードウォーク”に移行してしまうかと
はらはらするラテン風味のベース・ラインが粋だぜ。
日本語から英語にスイッチする瞬間もスリルたっぷりだし
真理子さんの英語の発音もいかしてる。
ベースのヴァージョンが見当たらないので自身の
弾き語りでどうぞ。
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by miracle-mule | 2010-02-19 01:35 | アーカイヴス