カテゴリ:ノート( 60 )

反復好き



シンプルなモチーフが寄せる波のように幾度も幾度も反復して
曲の律動とはまた別な大きなリズムを作り出す。
波と波のあわいに物語とも言えないような
景色や心象の描写が現れては消えて行く。



MD"So What"といい
ハンコック"Maiden Voyage"といい同じ反復といっても
ミニマルの酩酊ともファンクの陶酔とも異なる
抑制された静かな高揚のようなものがあり
それがとても2010年代(でなければ五十代)の気分にフィットする。
構造だけ見れば小津映画もやはりこんな感じ。
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その最新モデルがアルバムの穏やかな流れに打たれた楔のように
置かれた二曲目の"Five Steps"と七曲目"Beaches"。
You Tube にないようなのでここでさわりだけ
伊藤ゴローのソロ第二作"Glashaus"。
ヘッドフォンのボリュームを上げて
音の隅々に耳を澄ませる。
無人の海面にしんしんと降る雪のような
圧倒的な静寂がやって来る。
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by miracle-mule | 2012-06-04 01:56 | ノート

ロッド・マキューンを好きになった、のじゃが



昔はロッド・マッケンと表記されていましたが
最近はマキューンで定着したみたい。
ジャック・ブレルのカヴァー、英訳が名高い
というか本邦においてはそこでしか評価されていない
といった印象のロッド・マキューンだが
今あらためて聴くと胸に滲みる本当によい声をしているし
インテリジェンスに満ちた男ぶりの様子よいことといったらない。
swallow ブログ で再会して惚れました。
ファンになるのが30年何年遅れたのはマイルスの場合と同じだが
マイルスと違ってまともな値段で買えるCDはごくわずか。
せめて10年まえに気づいていればとまた悔やまれる。
わしのアンテナ、まっこと鈍い。
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by miracle-mule | 2012-05-05 03:25 | ノート

電化マイルスが好き、なのだけれども



「わかんねー」っていいながら首までエレクトリック・マイルスに浸かる日々。
なぜ「エレクトリック」って限定が入るのかというと
電化する前のいわゆるモードの頃のマイルスをまだうまく楽しめないから。
「わかんない」のはまあいいんだけどうまく腑に落ちてくれないのだ。
ジャズ勘がないから。
でも、あと何百回か聴けば
「わかる」ことはできなくても腑に落とすことは出来る気がする。
子曰く・・・って寺子屋的に何度も繰り返してると
理屈をすっ飛ばして意味とか構造とかの向こうにあるものが
ポンと「解っちゃう」時があるんだと思います。
それはそのあるものを「理解」したというのじゃかくて
そのあるものとの間に通路ができた、繋がったと感じる体験です。
これがうれしい。
翌日には閉じていることもままあるのだけれども。
うう..
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by miracle-mule | 2012-05-03 02:37 | ノート

リボン



リボン・ヘルムの重みのあるドラムと無骨な歌声は
ロック・バンドの中のロック・バンド「 The Band」の
中心であり華だった。
最も多く聴いたバンドの華だった。
そのリボンが亡くなった。
七十一歳。
人の一生って短い。
ちょっと長い刹那みたいなもんだ。
そのうちに自分たちパンク/ニューウェイヴ世代の番が来る。
もう早死にとも夭折とも言われない
他の世代がそれなりに納得する年齢で。
自分たちだけが納得できないんだろうなあ、きっとその時。
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by miracle-mule | 2012-04-21 12:54 | ノート

マイルス&デイヴィス



あいかわらずジャズというかマイルス漬けの日々です。
自分は音楽理論にはまったく疎いので
曲をコードやモードや律動で分析することはまったくできず
CDを聴いていてもそのあらかたは理解できないから
わかんないー!と叫ぶ毎日。       
それでもはずしながらも音階を追い
ノリ遅れながらポリリズムの拍子を取りしていると
奇跡的にどうしようもなく幸せな数小節に曲のどこかで巡り会う。
こんなあらかじめ予告された幸せな事故を心待ちにしているような心持ちが
マイルスを聴くという慣れない行いの真ん中にあります。
でも考えてみれば十代半ばにロック/ポップスを聴き始めた当時も
ワクワクと自信なさがないまぜになったような
豊かな深い森に迷い込んだような
こんな気分だった気がする。
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by miracle-mule | 2012-04-19 00:58 | ノート

目下の一曲4 Go West

モンキーズのデイヴィー・ジョーンズが亡くなって
その日いち日は”デイドリーム・ビリーヴァー”を脳内リプレイして
喪に服そうと思っていたら
店内放送のペット・ショップ・ボーイズ”版”ゴー・ウエスト”に
出会い頭に遭遇。
よりにもよってこのゲイの聖歌みたいな歌に哀れ我が脳みそはあっさり占拠され
神聖たるべき日は終日頭の中で西へ西への大合唱と成り果てた。
ていうかまだ僕の右手は西を差し示し続け.."Go West"
バカバカしい曲なんだけど何年かに一度必ず捕まっちゃうんだな。
あのイントロでトキメイちゃう自分がああ情けない。
それにしてもなんて男性比の高い会場なんでしょうか。



「でもこいつらやっぱりつめが甘いよね。
やるならこれくらいやってほしいよね」
って見始めたのがお馴染みマーク・アーモンドの”ジャッキー”
この仕種,この目線。もう完璧。
完璧に気持ち悪い。
二回で力尽きてそれ以上繰り返し見ること能わず。
ペット・ショップ・ボーイズが何日も執拗に脳内でリプレイされ続けるのは
致死量に至らないこの絶妙な水増し感、詰めの甘さのせいなんだろうな、きっと。
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by miracle-mule | 2012-03-06 02:25 | ノート

やっぱりトムが好き



便秘のライオン、でなければベンガル虎の断末魔。
トム・ウェイツのこの声について行けないというヒトも少なくないかと思う。
僕もそのせいでこの十年くらいご無沙汰でした。
でも考えてみればこれだけ美しい曲を書いちゃうと
気恥ずかしくてとても普通の声じゃ歌えないという気もしてくる。
酒の力だって必要かもしれない。
そう云えばこの曲、声といい歌いぶりといいたまたまかもしれないけれど
ポーグスの大酒飲みシェーン・マッガワンそっくり。
極めつけのシャイはいつもダメな男の演技を忘れない。

2011年の大傑作"Bad as Me"の六曲め。
どさくさ紛れに昨年のアルバム大賞、これに変更。

注)プレイボタンを押すとブロックの表示が出ますけど
「You Tubeで見る」をプレスしてもらえば見られます。
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by miracle-mule | 2012-02-22 22:24 | ノート

アナログの落とし物



ジャズを頻繁に聴き始めたのにつられてアナログ・レコード聴く機会が増えてきた。
そんな中82年にリリースされたピエール・バルーの"Le Pollen-花粉"もよくターンテーブルにのる一枚。
ピエール・バルーの東京の弟たちともいえそうな加藤和彦、高橋幸宏、坂本龍一、鈴木慶一、清水信幸、清水靖晃といった面々がうれしそうに、楽しげに、愛情を込めてバックアップしている。
それに応えるバルーの歌はへたっぴだけど生成りの手触りで素直にこころに沁みてくる。
これは加藤和彦の代表作”ベル・エキセントリーク”に入っていても違和感のない、バルーの詩にトノバンが曲をつけた当時の東京サウンドの鏡ともいうべき名曲
"Pepe"



高橋幸宏作編曲の表題作"Le Pollen"。
デイヴィッド・シルヴィアンもゲスト参加してなんだか和気あいあいと楽しげです。
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by miracle-mule | 2012-02-01 22:20 | ノート

マイルスのヴォコーダー



昨年の終盤から寝ても覚めてもマイルスの日々。
気づいたことがいくつもあったような気はするものの
全部忘れた。
ひとつだけ焼け残った記憶を忘れぬうちに書き留めておく。



いつも新しい発見に満ちているブログ”続・年間通してベスト・アルバム選び”の
ジェイムス・ブレイクに関する記事(昨年五月)における
「ロボットの声として使われてきたヴォーカル加工装置を、
180度転回させて、生身の声よりも人間らしい響きとして聞かせてしまった」
というオートチューン/ヴォコーダーに関する鋭い指摘には心踊らせたものだが
マイルスのミュートにもどこかこれに似た想いを抱かずにはいられない。
極めて肉声に近いトランペットという楽器に装着されて
増幅されたメタリックな響きは
ラッパ吹きのこころの内を探査するソナーようで
その微細な揺らぎを少しも損なうことなく投影し
映画撮影において昼日向を真夜中に一変させる
デイ・フォー・ナイトのフィルターさながらに
聴き手の眼下の景色を一気に月光の青に染め上げる。
かのトランペッターはこの新たな”こぶし”を手に
ブルースの更なる深みに至った、のかな。
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by miracle-mule | 2012-01-20 02:02 | ノート

第一回 輝け!miracle-mule ミュージック・アウォーズ

あっという間に冬至も過ぎ去って今年もあと僅かとなりました。
レコード大賞では細野さんが最優秀アルバム賞だという話で番組のトップで生出演までなさるとか。
時代は変わったなあ。
ということでmiracle-muleでも本年発売のベストファイヴを選んでみました。
半端な数字になったのは今年発売になった新譜を十枚以上買ったかどうかあやしいから。
ものすごく少ない枚数の中から厳選されたまるで権威のないアウォードです。



一位)Joe Henry / Reverie
とても良さそうなんだけどいまひとつピンと来なくてどこかポイントを聴き逃しているはず、と聴き続けていたらどこがポイントかも解らぬまま中毒になってしまった。

二位)Tom Waits / Bad as Me
ノイズもぺろりと飲み込んだ久々にぐっと来るトム・ウェイツのロック・アルバム。
胃袋がでかくて丈夫。

三位)James Blake / James Blake
気持ち良さと悪さの境い目の渦に巻き込まれる不安と恍惚。

四位)David Lynch / Crazy Crown Time
気持ち良さと悪さの境い目でダンス、ダンス、ダンス。

五位)Calendula / naomi & goro & 菊地成孔
ボサの不気味な美しさをさらりと聴かせるは菊地凄い。
今度は是非坂本のピアノとデュオでお願いします。

次点)Raphael Saadiq /Stone Rollin'

一服の清涼剤。今年一番のパーティ・ミュージック。

特別賞
The Beach Boys / Smile
ロック黎明期に生まれてかけその40数年後にやっと生まれたポスト・ロック。

うーん。
輝けといいながら不気味さが勝ち気味であんまり輝かなかったかなあ、第一回。

今年もお世話になりました。
来年は五日スタートになります。
良いお年をお迎え下さい。
ではでは。
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by miracle-mule | 2011-12-29 00:04 | ノート