カテゴリ:ノート( 60 )

目下の一曲3 フランク・ロイド・ライトに捧げる歌

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ちょうど二年程前スコット・ウォーカーに再会して以来
もともと興味のあった快と不快の境界エリアが
大きな関心事としてずっと頭の中に居座って今も立ち去る気配がない。
例えば"It's Raining Today "の背景で鳴り続けるストリングスらしき響き。
協和と不協和の綱引きがこの先どちらに転んでいくのか
気をもませながらもスリリングなことこの上ない。

サイモンとガーファンクルにこうした不安定(不安)の美を求めるひとがどれだけいるのか知れないけれど
この曲は間違いなくこうした系譜に連なる美曲だと思われます。
アートの美声とフルートとパーカッションが印象的な曲の背後に
ひっそりとミックスされた 淡い霞のようなストリングスのうねりは
死者フランク・ロイド・ライトと語らって
生と死の境い目の揺らぎ、不安の美を見事にを映し出す。
ドラマティックな シングル”明日にかける橋”のB面に
この曲をすべり込ませたサイモンのセンスにあらためて脱帽。
陽の光が日々弱まってもうひと月もすれば
巷が来訪する死者で賑わうハロウィンがやって来る。
今年はスコットとこの曲でその日を待 つことにする。



沼津市大岡509−1 音楽図書館 miracle-mule
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by miracle-mule | 2011-09-22 02:26 | ノート

わななくくちびる

i TunesやYou Tubeで音楽をかけていてまことに便利だなと思うのは
好きな箇所気になる箇所をドラッグひとつで簡単にリピートできるところ。



導入部のピアノともヴァイオリンのピッキングともハープともとれる弦の響きや
不可思議に進行するストリングスの和声など
聴き所満載のScott Walkerの名曲"Boy Child"には
この便利な機能を使って繰り返し味わいたい箇所がまた別にある。
それは一分二十秒あたりから始まる
Go seek the Lady who will give,not take away
という一節の中の「will」の発音で
ここがとにかく気持ちよいのだが
さらに、つい夢想されるこの部分を歌うScottの下唇や口もとの
わななくような動きには男の色気が集約されているようでたまらない。
この見たこともないわななきに何故ここまで惹かれるのか
我ながら不思議だったのだが過日この口真似をしていてはたと気づいた。
(何故口真似などしているのかな)



ほかでもない熱心なScott支持者でもあるDavid Bowie畢生の名唱でも知られる
"Wild Is the Wind"である。
4分55秒(You Tube 版では2分37秒)あたりから繰り返され5分20秒(同3分07秒)で絶頂を迎える「Wild is the wind」
というフレーズの「Wild」の「ル」が「ウ」に聴こえるあの感じが
"Boy Child"の「will」とドンピシャ重なるのだ。
デフォルメされ芸の域まで高められたあのわななきも
僕の口真似を通してピタリとScottのピースが収まるのだった。
そこのところはこのpvで確認できます。
徹頭徹尾クールなScottとは対照的に
万感の想いを込めて歌い上げるBowieだけれど
そのScott好きは口元に露でした。


沼津市大岡509-1 weekend books内 音楽図書館 miracle-mule
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by miracle-mule | 2011-09-07 22:46 | ノート

目下の一曲 2

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Led Zeppelin / D'yer Mak'er
ジャメイカと読むのでしょうか。
特にどういう思い入れもなかったのにふとした拍子に虜になって
仕事の行き帰りに、仕事の空き時間に、仕事中人目を盗んで、と
浴びるように聴かずにいられなくなる曲というのがたまにありまして
目下のそれが獅子王たちのこの曲です。
ドラムはうるさいくらい力まかせだし
ヴォーカルは耳をつんざく金切り声だし
およそレゲエにはふさわしくないパフォーマンスなのだけれど
ドラムって元々うるさいものだし力いっぱい生きるのは正しいことだ。
ヴォーカルだってうるさいくらいが元気でいいんだ。
金切り声大歓迎!
なんてこれまでの印象をしゃあしゃあとひっくり返して
恬然としているこの臆面のなさ。
こちらの性格にも若干問題はあるやもしれぬが
責任の大半はあまりに気持ちよいこの曲のとろさにあると僕は思います。
ツェッペリンとユーモア。
隠れテーマかな。
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by miracle-mule | 2011-05-09 01:43 | ノート

目下の一曲 1

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ザ・ビートルズ / アイ・ウォント・ユー

高校時分怖くてひいひい言いながら聴いていたベスト3が
キング・クリムゾンの”21世紀の精神異常者”と
マイク・オールドフィールドの”チューブラー・ベルズ”と
ボウイの”永遠に周り続ける骸骨家族の歌”
が、上には上がというか下には下がというか
あんまり怖くて聴くに聴けなかったのがビートルズの(ジョンのと言った方がいいかもしれない)この曲。
たいてい”アビイ・ロード”はこの曲を飛ばして聴いていました。
微妙にアレンジをずらしながら執拗に繰り返される異様にシンプルなリフ。
痛々しいほど弱々しいすがりつくようなジョンの歌声。
その声を踏みつけにして瀬戸際へとジョンを追いつめるかのごとき
堂々とうねる(好人物で無神経な)ポールの圧倒的に見事なベース。
そして砂嵐のノイズと避けようもなく訪れる
ジョン・レノンが「ビートルズのジョン」を葬ったあの衝撃の7分45秒。
”アビイ・ロード”は裸足のジャケット写真から
ポールの死亡説が流れ出したいわくつきのアルバムでもあるのだが
あの時亡くなったのはもちろんポールではなく
ひとりのビートルとしてのジョンだった
というのがこの頃この曲を聴く度に頭をもたげる僕の邪推なのだけれど
だからこそ自分の最も深いところへ届く祈りの歌として
聴こえてくるのではなかろうかこの曲は。
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by miracle-mule | 2011-04-08 03:26 | ノート

エスペランザ・スポルディング



自分は普段あんまりジャズは聴かないし
ジャズ・ヴォーカルとなると絶無的に縁がないのだけど
来日公演の新聞記事にノセられてYou Tubeでチェックして驚いた。
才能の放電する音がバチバチ聴こえて来そうだし。
これが弾き語りの歌とベース?
ベースに転向した矢野顕子みたい。
さらにさらにその容姿と仕種の愛らしさ。
こんなきれいなひともいるんだなあ。
世の中広いなあ。
いやあ、いい世の中だなあ。
耳に幸、眼に福。
黙ってにファンになりました。

素顔をこんな感じ
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by miracle-mule | 2011-03-09 21:50 | ノート

ナツメロの指紋1

マッシュ・マッカーン / 霧の中の二人
Mashmakhan / As the Years Go by

時代を超えて生き続ける名曲が失ってしまう時代の香りを
何より色濃く保存しているのは
時代を超えることもできず
かといって地下に潜ってカルト的信仰を集めることも叶わず
変化の波にあっさり呑まれて消えて行った一発屋たちの
忘れられたヒット曲ではなかろうか。
記憶の彼方に埋もれて忘れていたことさえ忘れていた曲との再会は
釣り上げられる魚が踊りながら魚影を現すようにゆらゆらかつダイナミックに
その時代の自分のこころ持ちを照らし出す。ような気がする。

必要以上に重々しい出だしに続いて現れる
思わず膝が折れるようなヘタレなオルガンがまず印象的。
当時けっこうクールだと思われたヴォーカルもまあもったいぶってるだけでした。
と、褒めたくても褒め言葉に窮する曲とバンドの
このトロくさいメロディとアカ抜けない雰囲気こそは
今この時代に真似したくてもどうにも真似しようのない
70年代のキモのひとつだという気が強くする。
まあ誰も真似したくないとは思うけど。
激動の60年代とバブルに踊った80年代に挟まれて
いまひとつ影が薄く定まった形の見えにくい
70年代の気分がよくあぶり出されていて
広い意味で好きな曲であります。

”栄光のロック&ポップス・ベストコレクション vol,2”に収録。
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by miracle-mule | 2011-03-02 22:02 | ノート

カルタ

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背表紙を向けて並んでいるCDを見ても
なかなか聴いてみたいという気持ちが高まったりはしないだろうから
面陳列にしたいのだけれど棚が足りないし
壁もそれができるようには作られていないので
それでは、と床に並べてみました。
CDというのは小さくて壁に飾っても
LPなんかに比べるといまひとつパッとしないのですが
これが床に敷き詰めるとなると
小ささ故に狭い範囲にたくさん並べられて面白い。
パッチワークみたいなカルタみたいな。
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棚に収めるとポッチリになってしまうけれど
こうして拡げてみるとけっこうなボリューム。
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知ってるの知らないの、聴いてみたいのみたくないの
ジャケットが面白いのとそうでもないの
あれこれ言いつつごらんくださいませ。
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R以降はまたの機会に。
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by miracle-mule | 2011-01-12 02:33 | ノート

ルーファス覚え書き

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ルーファス・ウェインライトは引用に秀でたひとで聴いていると
聴き馴染んだメロディや音作りにたびたび出会う。
例えば"Oh What a World"では直接ラヴェルの”ボレロ”を引いているし
リリース・ザ・スターズの一曲め"Do I Disappoint You"の後半部分で
金管が狂騒的に唸りを上げる様は
”ボレロ”のクライマックスの巧みなヴァリエイションのようだし
最近作”オール・デイズ・アー・ナイツ”の冒頭を飾る
"Who Are You New York"はドビュッシーの”子供の領分”を換骨奪胎して
ベートーヴェンの”悲愴”をちょいとふりかけた感じ。
しかしながら!驚愕すべきはリリース・ザ・スターズの"Sanssouci "。
カリブの涼やかな風の如きフルートが心地良いこの曲の
一番大事なパートがよりにもよって
荒木一郎の”いとしのマックス "でできているのだ。
ルーファスが印象派の大作曲家に魅かれるのはわかり易いけれど
荒木一郎はね、想像もつきませんでした。
さすがルーファス、引出しが豊富、っていうか豊富過ぎ。
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by miracle-mule | 2010-11-01 12:18 | ノート

ルーファスは天使だ/ルーファス・ウェインライト東京公演

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凄いステージだった。
二部構成でどちらもピアノの弾き語り、共演者はゼロという
全くのソロ・コンサート。
第一部は新作”オール・デイズ・アー・ナイツ”全曲。
その間拍手、歓声の類いは禁止。
娘のピアノの発表会に臨む父親の気分を思い出す。
咳き込むことのないよう用意しておいたガム(長持ちするストライド)が
異常な緊迫感を多少なりともやわらげるのに役立ってくれました。
正直に言えば問題は少なくなかった。
弾き語りでやるにはピアノのパートが難しすぎる。
曲が要求する技術の水準が高すぎる。
案の定指がついて行き切れない場面がいくつかあった。
一部終了後の休憩時時間には後ろの席から
ミスとかじゃなくて16のパッセージが全然弾けてなかったと
大きな声が聞こえてきたりもした。
またピアノで書かれたと思しき曲ばかりが選ばれていたために
曲同士が持ち味を相殺しあった気もする。
が、そうした瑕疵がショーの魅力を減じたかといえば答えは全くノーで
ステージの上で自分の限界を押し拡げようと苦闘する姿も含めて
持てるもののすべてをオーディエンスに向かって差し出そうとする姿
自分という果実を惜しみなく分け与えようとする姿に
思い切りこころ打たれた。
それは才能は必須の要素ではあるけれど才能だけでは決してもたらし得ない
歓びを伴った感動で時間を追って深く心に沁みて来る。
「ルーファスは天使だ」という自説が一層確固としたものになった
素晴らしい一夜。
でもせめて一曲ギターの曲が聴きたかった。

"Cigarettes And Chocolate Milk"! 感電した!
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by miracle-mule | 2010-10-06 21:16 | ノート

孤独のメッセージ

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予約してあったレナード・コーエン の新作”ソングス・フロム・ザ・ロード”が届いた。
前作がライヴだったのになぜかまたライヴ・アルバム。
新味はないのだけれどその異様に格好の良いじいさんぶりには抗えず購入。
しばしジャケットに見とれた後見開きの写真に眺め入る。
うむむ、とひと唸りして右側をいま一度開くと
またまた粋なショットが眼に飛び込んで来るはず..なのだが
そのフォトの上にどう見ても雰囲気にそぐわないビニール袋様の物体。
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荒波を背景にドーンと鯛らしき魚がおわします。
Fortune Teller / Miracle-Fishと書かれており
裏返してみるとFortune Teller Fishとありその下に
Moving Head ・・・Jealousy
Turns Over・・・Flase
Motionless・・・Tired
などと書かれ、一番下にはMade in Taiwanの文字。
これ何でしょう。
気になって音楽が素通りしちゃうよ。 
よもやあらかじめこのスタイリッシュな商品に添付された
パッケージの一部ではありますまい。
とすると工場ラインの女工さんの私物の混入が疑われるのであるが
見るからにつやつやで使用感が薄く女工さんの生活感の痕跡がない。
とすると意図的に挟み込まれたメッセージということになるのだが
孤独な女工がレナード・コーエンのCDとMiracle Fishを通じて
この自分に向かっていったい何のメッセージを発信しておるのか。
とんと見当がつかぬ。
「お暇なら来てよね...」ではないと思う。
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by miracle-mule | 2010-09-19 03:09 | ノート