カテゴリ:ノート( 60 )

ノスタルジーの伝道者

ピーターアレンが亡くなっていた。
とうの昔、18年も前にエイズで。
大ファンだった音楽家の死をずっと知らずにいたのだが
たくさんの悲報の中に紛れて忘れていたということもあり得る。
というか忘れていたに違いない。
18、19の時分いっしょにピーターに聴き惚れた
耳ざとい友人Tがその訃報をこちらに伝えぬはずがないという気もするから。
それは薄情というより記憶力の問題でもうなんだって片端から忘れる。
忘れていながら彼の最も重要な三枚のアルバムがCD化されないことを
ずっと憤って来たのだから間抜けにも念が入ってる。

Continental American(1974)
c0131206_1345576.jpg
Taught by Experts (1976)
c0131206_1352693.jpg
Is It Time for Peter Allen (1977)
c0131206_1365130.jpg
ロック/シンガー・ソングライターよりちょっと水っぽくショウビズ寄り。
コンサート・ホールよりキャバレーやナイト・クラブが似合う微妙な立ち位置で
70年代のコール・ポーターはピアノのキーを叩き
ひとなつこく気持ち良く伸びる声で
ノスタルジーに目覚め始めた時代の少年たちを魅了したのだった。
ジュディ・ガーランドに見出されてアメリカに招かれ
ジュディの娘のライザ・ミネリと結婚して別れ
エイズで亡くなったというプロフィールが
ノスタルジーの伝道者にふさわしいかどうかはしらないけれど
デヴィッド・フォスターに壊される前のA&M作品はどれも
乾き切った現代人の心をいっとき後ろ向きに優しくほぐしてから
しっとりと潤す。

ジュディ・ガーランドを歌った名曲"Quiet Please ,There's a Lady on Stage"
[PR]
by miracle-mule | 2010-09-13 01:40 | ノート

見た目も大事

c0131206_2215771.jpg
僕のグレン・グールドはCDのジャケ買いから始まった。
90年頃の話。
クラシックのジャケットといえば
正装した演奏家のポートレイトを額装したものか
楽聖のいかめしい肖像画と相場は決まっていたからこれには驚いた。
それは当時のロックなどより断然カッコ良く、
何というか買うより他仕方なかった。
買ってみたその中味はジャケットを遥かに凌駕していて二度びっくり。
以来ずっと良い思いをさせてただいている。
weekend booksで一番売れてるCDはなんとグールドなのだけど
皆さんやっぱりジャケ買いかしらん。
これは”フランス組曲の二枚組。
[PR]
by miracle-mule | 2010-09-01 22:48 | ノート

予習

c0131206_1483570.jpg
根が堅い質で昔から試験の前日だけは勉強し
コンサートの前には繰り返しレコードを聴いて予習したもの。
左はルーファス・ウェインライトのライヴ・アルバム”ミルウォーキー・アット・ラスト”のDVD付き。
近年すっかり足が遠のいて10月のルーファスは
へたをすると10年ぶりの外タレ公演になる。
特に意識していたわけでもないのに
いつの間にかこんなものを用意して予習してる。
十八歳の魂米寿までというけどホント。

右はボウイの”ヤング・アメリカンズ”のDVD付き。
特にコンサートがあるわけでもないのに何の予習かといえば
むろん”ステイション・トゥ・ステイション”のデラックス・エディションの発売に備えるためだ。
それはLP二枚、CD四枚、DVD二枚というバカバカしいほど巨大なセットで
不意に攻められれば苦戦は必定。
購入は敵が乗り込んで来る前に手の内を多少でも察知しておかねばならないという戦略上の理由からであって
決して所有欲にかられての行いではないんだなという所
押さえておいてほしいな関係各位の皆々様とうちの奥さん。
[PR]
by miracle-mule | 2010-08-21 02:37 | ノート

真夏の夜のジャズ

c0131206_0423772.jpg
50年前に公開されたニューポートでのジャズ・フェスティヴァルの模様をを収めたこの音楽ドキュメンタリーをweekend booksで企画中の”ガーリー・ジャズ”で上映できないかと思案中です。
生産中止のDVDは法外の高値で入手はむつかしく、手持ちのレーザー・ディスクを引っ張り出したもののプレーヤーの具合が今ひとつ調子が悪い。20年以上前のマシンだからまあ仕方ないけれど、そう言ってると上映できないし。
さてどうしよう。
c0131206_0425560.jpg
モンクは”ブルー・モンク”
アニタ・オデイは”スウィート・ジョージア・ブラウン ”と”ふたりでお茶を”
ジョージ・シアリング”ロンド”
ジェリー・マリガン”アズ・キャッチ・キャン”
などなど見所満載。
アニタ・オデイはホントにおしゃれでまさしくガーリー。
時代の風俗がまた今見ても素敵です。
なんとかお目にかけたく気持ちだけバタバタしている熱帯夜。
[PR]
by miracle-mule | 2010-07-22 00:46 | ノート

続・ジャズの見てくれ

c0131206_2356272.jpg
で、ジャズには縁が薄い自分だが難儀なことに
でなくて有り難いことにブルー・ノートのカタログを中心としたLPと
ジャズ喫茶のマッチを蒐集している御苦労な友人がひとりおり
彼のコレクションの展示をweekend booksのギャラリーでやってみようか
という企画が密かに進行中ていうか潜航中(まだ店主の許可がおりてないので)。
イメージは”乙女のジャズ(仮題)”
マニアじゃなくてもそっとメンタルの柔軟な方たちに向けて
視界の開けた展示にするから
許可してほしいな、店主殿。
[PR]
by miracle-mule | 2010-06-16 00:11 | ノート

ジャズの見てくれ

c0131206_253328.jpg
たいていのひとは同意してくれると思うんだけど
モダン・ジャズのジャケットって異常に洒落ている。
このチェット・ベイカーは
”ジャズ・イン・パリス”というシリーズもののうちの一枚で
オリジナル盤のジャケットとは関係ないけどやっぱり困るくらいに洒落ている。
モダン・ジャズのジャケットを概観して思うのは
ミュージシャンの「熱い想い」と無関係に
デザイナーの勝手で作られたジャケットほどクールでカッコいいんじゃないか
ということ。
たぶん”クッキン”や”クール・ストラッティン”のデザインは
マイルスやソニー・クラークの意向とは無関係だし
作品の本質を反映しようとする気もほとんどない。
あの格好良さは何の制約もなく
デザイナーがやりたいように好きにした結果だろう。
それはデザインの仕事としてはいささか問題かなという気もするけれど
デザインもまた説明ばかりに向かうと衰弱するというのも確かなことだと思う。
[PR]
by miracle-mule | 2010-06-15 03:41 | ノート

Schola

NHK教育でオンエア中の番組
Schola 坂本龍一 音楽の学校” が面白い。
坂本龍一が演奏家や学者を招いて音楽を語り
音楽を学ぶ中高生を相手に講義と指導を行うというもの。
第一回から四回まではバッハ。
通奏低音を味わったり対位法にトライしてみたり
不協和音のマジックを体感したりと授業はカラフルで
楽典はからきしの自分もまじめに受講しています。
学んでいる子供たちは真剣そのものだけど
教えてる龍一のなんとも愉快そうな姿を見るとこちらもつられてつい頬がゆるむ。
とんがりまくってたあの坂本龍一が今子供たちを相手に実に楽しそうで
それを見られるだけでもうれしくてお釣りがくる。
この間の第五回からジャズ篇が始まった。
客員教授は山下洋輔さん。
人柄そのままの笑顔と人柄を裏切って豹変するピアノの凄みとえげつなさ。
相変わらずのギャップのデカさに産毛もそそり立つ。
洋輔さんと龍一のデュオ、聴き逃すに手はないです。
[PR]
by miracle-mule | 2010-05-05 13:33 | ノート

思い切って買ってみた。

c0131206_155101.jpg
デヴィッド・シルヴィアン / マナフォン
David Sylvian / Manafon

デヴィッド・シルヴィアンの目下の最新盤”マナフォン”のデラックス・エディションが今日やっと届いた。
前作の”ブレミッシュ”にいまひとつ乗り切れなくて
躊躇していた新作だったけれど
スコット・ウォーカーの近作二枚"ティルト"と"ザ・ドリフト"を通過した耳にその”ブレミッシュ”がとてもフレッッシュに聴こえ始めた勢いに乗って気合いで買ってみた。
CDとDVDが一枚ずつ、B5サイズのブックレット二冊が布張りの匣に入ってる。
ブックレットも布張りで小さな卒業アルバム風。
正直ブックレットのイラストはいまひとつ好みじゃなくてううっ残念。
今聴き始めた音の方にはちょっと及ばない感じ。
そうは素晴らしい。
薄暗い森の中を歩きながら
森の語りに耳を澄ましているみたい。
聴こえる音や聴こえないはずの声がゆっくり浮かんでは消えて行く。
時間をかけて少しずつ細胞に馴染ませて行きたい。
映像はどんなだろう。
DVDを観るのは億劫な質なんだけど夏までには観られるといいなあ。
絶対いい...はず。
高かったんだし。
[PR]
by miracle-mule | 2010-04-27 01:56 | ノート

Simply Red の Cuba!

c0131206_075523.jpg
三月に友人が送ってくれた
シンプリー・レッド、2005年のキューバでのライヴDVDを
やっと観ることができた。
素晴らしい!
”ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ”でもお馴染みの
古いアメリカ車がゆっくり行き交うハバナの街
導入部から引込まれずにはいられない。
由緒ありそうなオペラ・ハウスがまた凄い。
その会場の威厳に負けじと(ということもないのだろうけど)オーケストラがフィーチャーされているけれど大袈裟にならず抑制が効いていてとても好感が持てる。
それは主役のミック・ハックネルも同様で
後半の爆発までは抑え過ぎと思えるくらい静かに丁寧に歌い継いで行く。
バックのバンドも腕の達者なひとたちばかりだが
これみよがしなところはひとつもなく
かといってショーのために自分を犠牲にするでなし
すべてが良い塩梅に作用していて実に壮快。
ミックのプロデューサーとしての器の大きさが伺える。
それにしても声の力、歌の力というのはすごいもの。
喉一本でひとはここまでも気持ち良くなれるものなんだと
認識を新たにしたライヴであります。
曲も良い。
どの曲もオリジナルとは趣きを異にしているけれど
熟した果実のように香り高い。
どれも良い曲。こんなに良い曲だったんだなあ。
ありがとう。よいものを見せていただきました。
[PR]
by miracle-mule | 2010-04-11 23:59 | ノート

マイナー・スイング

c0131206_13141126.jpg
舞台はナチ占領下のフランスの片田舎。
少年の無知と無垢がもたらす悲劇を描いた
ルイ・マルの”ルシアンの青春”を友人と観たのは
もう三十五年も前のこと。
ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリの演奏にも
この映画の導入部で初めて触れた。
暗い診療所の場面から一転
懸命に田舎道を自転車で駆けるルシアンの姿に重なって
それは唐突に始まる。
浮き立つような軽快なビートの上で見事に踊る
マイナー・スイング”の昂揚感と大人の苦みに
少年たちはあっけにとられて声もでない。
物語の悲しさ遣る瀬なさはこの軽快なスイングとの対比で
劇的に深まっていたように思う。
そのDVDが先日届いた。
タイムカプセルを開くような思いがする。
[PR]
by miracle-mule | 2010-04-07 13:16 | ノート