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ウィリーの奇蹟、ダニーの魔法

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ウィリー・ネルソン/テアトロ
Willie Nelson /Teatro

梅雨のさなか重苦しい天気が続き気分も沈みがち。
あまり快活な曲はかえって滑りやすく
秋から冬場にかけてよく聴く
アイルランドの音楽やウィリー・ネルソンに接する機会が多くなりました。
94年にダニエル・ラノワが制作した本作においても
その歌声の美しさは少しも損なわれることのないまま
年輪を加え滋味を増していて
なんだかつぶやかれる奇蹟のように心にしみいって来ます。
天性の美声故に安易な企画もののスタンダード・カヴァー・アルバムでも
そこそこのものを作ってしまうのが難であり悪い癖でもあるのですが
北国のひとダニエル・ラノワならではの
透き通って張りつめた冷たい空気感や雪深い山の静けさと
ウィリーの歌声の暖炉に燃える火のような温かさとがあいまって
音のタブローにえも言われぬ奥行きが作り出されています。
さらにフレンチ・カナディアンであるラノワには近しいはずのケイジャンや
カリブへの玄関口にあたるニュー・オーリンズ経由のラテンの香りが
隠し味に使われてほのかな希望の彩りを添えています。
78年に”スターダスト”で始めて耳にした時には
すでに老人に見えたウィリーですがあれから30年、
いったい齢お幾つとなりしか。
話題の映画”ホッテスト・ステイト”や”アイム・ノット・ゼア”でも
変わらぬ歌声を聴かせています。
まだまだ元気。
この三つ編み、美しい老人ぶりです。

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by miracle-mule | 2008-06-27 02:47 | アーカイヴス

ダン・ペン

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ダン・ペン/ドゥ・ライト・マン
Dan Penn / Do Right Man

聴いたそばからすねの古傷がもいちど疼き出す、
ダン・ペンはそんなタイプの曲を書かせたら名人です。
サザン・ソウルそのものみたいな無骨な節回しに隠されたメロウネスや
リズミカルなナンバーの粋と軽快さ。
おじさんならではの可愛げや愛嬌といったものが
よく煮込んだスープのような演奏の中から遠慮がちに立ち上がって来ます。
古いものに手を入れて大事に使っているからこそ滲んでくる、
そんな味のするの音楽です。
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by miracle-mule | 2008-06-23 02:35 | アーカイヴス

街遺跡

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メキシコ国境も間近なうらびれた街ティワナにて。
デニムのシャツも麻の上着もたちまち赤土の埃にまみれて...

...というのはまたまた大ウソ。
仕事場の裏手にて出土した
昭和の足跡、20世紀の指紋です。
ちょっと大げさ。
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by miracle-mule | 2008-06-19 01:59 | 街のバロック

新着案内/ソロモン・バーク

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ソロモン・バーク/ドント・ギヴ・アップ・オン・ミー
Solomon Burke /Don't Give up on Me

ジョー・ヘンリーがプロデュースしているというのでしてみた、ソロモン初体験。
あざとくディープな世界だったらいやだなと
そんな感じで聴き始めました。
アルバム・カヴァーの大物ぶった身振りやあまりにそれらしい節回しに
かえってチープな芸人根性が浮き彫りになってしまい
これはつらいかもと最初の三、四度目までは思ったものでした。
キング・ソロモンなんて名乗ってるし...
そうした小さくないと思われた傷さえも
曲の核心に大胆に切り込んで一気に彫り上げる
歌いぶりに繰り返し接すると
不思議と抗し難い魅力へと姿を変えて行きます。
本音も見栄も、ホントもウソも、意識も無意識も
歌えばみんな映し出てしまうのが良きソウルというものだったのだと
やがて気づきもします。
男のもろさが痛々しくも切ないダン・ペンのタイトル・トラック
"Don't Give up on Me"
あてのない旅に連れ出されそうなトム・ウェイツの"Diamond in Your Mind"
孤独感に胸を締めつけられるジョー・ヘンリーのダーク・ジャズ
"Flesh and Blood"
この人が歌ってもなお甘酸っぱいブライアン・ウィルソンの"Soul Searchin'''
ありきたりなブルース・ナンバーなのに
なぜか聴く度に好きになるディランの"Stepchild"。
他にもヴァン・モリソンやニック・ロウの名作がずらり。
これだけ曲が揃えば悪くなりようがない気もするけれど
癖の強い曲たちをすべて見事に乗りこなして
今聴きたいR&Bのすべてが詰まったようなアルバムになりました。
ブルースはギター!R&Bはオルガン!!
オルガンをフィーチャーしたジョー・ヘンリーの演劇的な演出がたまらない
2002年の作品です。

ブラック・ミュージックのコーナー、Sの項に入っています。
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by miracle-mule | 2008-06-17 02:31 | 新着CD

聴く映画/EL&P

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EL&P / トリロジー
Emerson, Lake & Palmer / Trilogy

プログレと聞いただけで思わず引きにかかる方も少なくない昨今ではありますが
そんな逆風の最中あえてお薦めしてみたいのが
プログレッシヴ・ロック・エンタテインメント派を代表するEL&P。
大きな曲想と憂いを帯びた美しい旋律。
幻想的で澄んだ歌声と歯切れの良いドラム、疾走するピアノとオルガン。
緩急自在な演出。
難解さとは無縁のどこまでも美味しい音響世界は
まさしく第一級の「聴く冒険ファンタジー映画」といった趣きです。
アルバム・カヴァーの三人が見つめる荒野は
アーサー王やランスロット、魔術師マーリンたちが駆け巡る
中世英国伝説の舞台でしょうか。
発表以来36年、聴く度にため息の出る続ける名曲”フロム・ザ・ビギニング”。
くすくすと笑いを誘うホンキー・トンクな小品”シェリフ”も収録。
”インディ・ジョーンズ”の新作公開が迫り気もそぞろな身には
乾きを癒すありがたいジェットコースター・ムーヴィーの如き一枚です。
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by miracle-mule | 2008-06-12 03:25 | アーカイヴス

新着案内/M.ウォード

M. ウォード/M. Ward

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トランスフィギュレイション・オブ・ヴィンセント
Transfiguration of Vincent

D. リンチ作”砂の惑星”の「木造(に見える)」の「宇宙船」の造形。
宿命の女性を失った男の悲痛なモノローグとして歌われる
ブライアン・フェリーの逆説的な”ユー・アー・マイ・サンシャイン”。
さらにこの曲が収められた名作”アナザー・タイム、アナザー・プレイス”の
”グレイト・ギャツビー”とアラン・レネの”去年マリエンバードで”を
重ね合わせたと思しきアルバム・カヴァー。
異質なあるいは相反する要素を組み合わせて新しいイメージを作り出す手法は
めずらしいものではないけれど
手際の鮮やかなものにはこちらを引きずり込まずにはおかない有無をいわせぬ力があります。
驚くほど無垢で甘美な旋律と不安をかき立てるか細い声とくすんだ音作り。
歪んだギターとのどかなアコギの絡み、
穏やかなギターと儚げなチェロの不穏なフーガ。
淀んだ空気の中、異質な要素の間に醸し出される緊張感が積み上げられた
M. ウォードの作り出すゴシックな世界が
よりにもよってカントリー・ミュージックの語法で奏でられる
皮肉の鮮やかさ。
カントリー、奥が深そう。
ニール・ジョーダンがインディーズで撮ったらこんな手触りのものになるのやも。
ちょっと夏向き。


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エンド・オブ・アムネシア
End of Amnesia 

静けさに昂揚する2002年のセカンド。


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デュエット・フォー・ギターズ#2
Duet for Guitars #2 

2000年の記念碑的ファースト。
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by miracle-mule | 2008-06-08 01:08 | 新着CD

ルシンダ

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ルシンダ・ウィリアムス/ウェスト
Licinda Williams / West

捨てられて、置き去りにされて、また捨てられて
それでも自分を捨てた相手の今を気遣いつつ
「あんた(ら)なしにやって行く術を学んでいるのよ」
驚く程しわがれたのどで切り取られたくたびれた近頃のアメリカの風景。
どこにも救いが見当たらないような重いテーマでありながら
「まあなんとかなる..か」とつぶやく声が聞こえた気になるのは
どこか一カ所くらいなら自分の身の置き所もあるだろうと思えるアメリカの広さと
ゆるくて風通しの良いカントリー風味の音のせいだろうか。
ビル・フリゼールまで使いこなしたルシンダ姐さんの
映像的な作家性が際立つ一枚です。
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by miracle-mule | 2008-06-04 13:32 | アーカイヴス