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新着案内/D.H.の子守唄

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T ボーン・バーネット/トゥース・オブ・クライム
T-Bone Burnett / Tooth of Crime

意識の浅瀬に不意に顔を出す無意識の深海生物たちの姿を
歌に置き換えたかの如きダークなシンフォニー。
クリーチャーたちの氏素性がまたおもしろく
例えば三曲目の快/不快の境界線上をふらついているようなメロディは
サイケデリック期のジョン・レノンみたいだし
七曲目の壊れたファンク・チューンは
ロクシー・ミュージック、セカンドの”ザ・ボーガス・マン”そっくり。
八曲目に至ってはまさにジャック・ブレルの”行かないで”そのもの。
ELP似のシンセ、ウォズ(ノット・ウォズ)似のブラスなども散見され
意識の浜辺でビーチ・コーミングするような愉しさも味わえる。
どれをとってもたまらない素材なのだけれど
素材選びの趣味の良さというレベルを遥かに超えて
無意識の波が意識の岸辺を浸食する見事なサイコ・ドラマに仕立て上げる手腕には舌を巻く他無い。
ストリングスをサンプルしたメロトロン(のふりをしたストリングス?)の不安定な音色と
糸を引く粘ついた歌唱が不穏さを煽る
ロイ・オービソンとの共作の五曲目はあっけにとられるリンチ・ワールド。
イザベラ・ロッセリーニを相手に「マミー...」と甘え身悶えする
”ブルー・ヴェルヴェット”でのデニス・ホッパーの姿が甦る。
本当にちょっと怖く、美しい。

収録曲ではありませんがその片鱗はこちらで。
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by miracle-mule | 2009-01-29 12:47 | 新着CD

本に呑まれて その7/静かなおもちゃたち

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舟越 桂/おもちゃのいいわけ

貧乏でなかなか買えずにいた本を先のクリスマスにサンタにいただいて
以来暇を見つけてはページをめくってため息をついている。
天童荒太や須賀敦子の装幀でもおなじみの彫刻家
舟越桂さんがお子さんたちのために手作りされた
おもちゃたちのポートレイト集。
今どきの子どもたちの中にはこういうものを見ても
おもちゃだ気づかない子もいるかもしれない。
動かないし光らないし。
子どもがもっと幼い時分にどんなにへたくそでもいいから
こうしたおもちゃをひとつは作ってあげるべきだったかと
この本を見るまで気づかぬとはつくづく愚か、また愚か。
気づいた時はいつもイッツ・トゥ・レイト。

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by miracle-mule | 2009-01-26 01:21 | 本の棚♦♦棚の本

49度線讃歌

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k..d.ラング/49度線を讃える歌
k.d.Lang / Hymns of the 49th Parallel

妻のお気に入りのカナダ人作家アリステア・マクラウドの長編小説
”彼方なる歌に耳を澄ませよ”(新潮社クレスト・ブックス)を
薦められるともなく薦められて読んだ。
カナダの東端の島に居をかまえたスコットランド移民の数世代にわたる生活を通して
「生きることの哀しみ」をこんなにも静かに気高く描き出した作品を他に知らない。
ニール・ヤング、レナード・コーエン、ジョニ・ミッチェル、
ブルース・コバーン、ロン・セクスミス、ジェーン・シベリーら
同じカナダ人音楽家の作品を集めてカヴァーしたk.d.ラングの本作は
この小説と驚くほど似た北緯49度以北の世界に聴き手を導く。
カナダ人の歌う哀しみは
いっときの激しい悲嘆というよりも
アイリッシュの伝承歌やカウリスマキの映画にも通ずる
いつも傍らにある哀しみとでもいうべきもので
それは一世代で完結することなく喜びとともに代々引き継がれ絶えることがない
というのはこちらの思い込みに過ぎないのだろうけれど。
彼らの歌にある哀しみは隙き間なく敷き詰めるように心に降りた霜のようで
彼女はその霜の結晶のひとつひとつを漏らさず歌い込んでいく。
痛いほど冷たい霜が手のひらで溶けて行くのを見つめるが如き彼女の歌声は
心の痛みそのものを生きているかのようだ。
哀しみは喜びにも増して私たちの心を深く耕す。

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これまたk.d.の讃歌
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by miracle-mule | 2009-01-21 03:04 | アーカイヴス

新着案内/スノウ・ドロップの歌声

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バシュティ・バニアン/ジャスト・アナザー・ダイアモンド・デイ
Vashti Bunyan / Just Another Diamond Day

ピカソやベートーヴェンのように制作に没頭していないと発狂してしまいそうな
天才やそれに類するひとたちのはじめにアートありきという
有無を言わさぬ圧倒的な世界に翻弄されるのは愉しい。
一方何より優先すべきは暮らしぶりであって
アートはあくまでその反映、というひとたちの
近況報告や旅先で投函された絵葉書みたいな人柄に溢れた作品には
天才たちの創るものとはまったく違った親しみがあってこれまた愉しい。
暮らしぶりを横糸に心持ちを縦糸にして織り上げた曲を
ギター、フィドル、バンジョー、マンドリン、ホイッスル、アイリッシュ・ハープといった生楽器
そしていくぶん開き気味ののどから生まれる
くっきりした輪郭を欠いた清澄な歌声で染め付けしたこの作品は
よく干されて陽の光をたっぷり吸い込んだ毛布のようでもあり
微風にそよぐカーテンのようでもあり
長年使い込んだ膝掛けのようでもあって
聴き手の身を覆う空気の質をゆるやかで親密なものにしてくれる。
共感と羨望とともにその暮らしぶりを思い描きつつ
おぼろげな音の響きを心を込めて聴く。
70年にリリースされた英国圏フォークの系譜に連なる奇跡的な一枚。
スノウ・ドロップみたいな歌声はこちらで。
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by miracle-mule | 2009-01-17 22:08 | 新着CD

四十三分の孤独

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カルロス・ダレッシオ/インディア・ソング
Carlos D'Alessio / India Song

ワルツにジャズ、サンバにハバネラ
そしてタンゴにフォルクローレ。
欧州と北中南米の哀愁と快楽を煮つめたような楽曲が並んではでいるけれど
このアルゼンチン生まれの作曲家の生み出す旋律の美しさの背後では
過去から未来へ向かって一方向に流れるとは限らない時間が
平然と行きつ戻りつしてみたかと思えば
亡くなったはずの者がさも当然といった風にひょっこり顔を出す
生と死の境もおぼろげな「南米的」なるものがぽっかり口を開けて
聴き手が覗き込むのを待っている。
75年公開のマルグリット・デュラス作品のサントラです。
将来、渋沢龍彦の”高丘親王航海記”が映画化される機会があったら
是非こんな音楽を合わせてせてほしいもの。

ジャンヌ・モローが歌うインディア・ソングはこちら
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by miracle-mule | 2009-01-14 01:50 | アーカイヴス

雲日和

狩野川べりから雲に隠れた富士山を見て

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またまた伊豆仁田のcafe irodoriさんへ

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大好きなバナナ・カスタード・パイとコーヒーで長居をしたあと
庭とサボテンを愛でて

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振り返ると箱根山の上に見事な月があり

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帰路、北を見ると愛鷹山を従えた富士山が西日を受けており

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西方向駿河湾上空には息を飲むような茜雲があるわけで..

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もう一度振り向いて東を見る。
行くところで見るものじゃないと思っていた箱根だけれど
富士から箱根へと続くパノラマ、この地の特権だなあと実に遅ればせながら最近実感。

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茜雲とバナナ・パイには最適ないち日。
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by miracle-mule | 2009-01-10 23:06 | 街のバロック

新着案内/ラッパの誘惑

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デヴィッド・バーン/ザ・ニー・プレイズ
David Byrne /The Knee Plays

85年、才気溢れ出て止まぬ一種躁状態のバーンが
ロバート・ウィルソンのオペラ”シヴィル・ウォーズ”のために提供した舞台音楽です。
トロンボーン、トランペット、各種サックスとパーカッション
そして自らのナレーションだけで組み上げたブラスバンドのサウンドは
ギターやキーボードをメインにした音楽に馴染んでいた当時の耳には
ラッパだけでここまで細やかで柔軟な表現が出来るものかと
驚嘆したもの。
ジャズ以外にも様々なエスニックの要素が
たとえばアーロン・コープランドなど
アメリカのクラシック音楽とともに流れ込んでもいるようです。
スティーヴン・フォスターを思い起こさせるのどかなメロディーと
ブラス隊による大らかで暖かな響きが郷愁を呼び起こし
天気の良い昼下がりに鳴らせば
森と大河と牛が草を食む牧草地そして地平線まで続くトウモロコシ畑に
聴き手を遊ばせる微睡みへと誘う
そんな一枚。

まずはこちらでちょっと誘惑。
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by miracle-mule | 2009-01-09 01:21 | 新着CD

川向こう

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ウイリー・コローン&ルベーン・ブラデス/シエンブラ
Willie Colon & Ruben Blades / Siembra

繭でくるむような魔法のトロンボーン・サウンドとコロ(コーラス)
流れるようなストリングスを用いて
一曲一曲を息も吐かせぬ一編のショート・ムーヴィーに仕立て上げる
音の映画作家コローンの手腕と
ブラデスの親しみやすく情緒に溢れながらも乾いたメロディのセンス、
伸びやかでつややかな歌声
そして生真面目な姿勢が
緊張を保ったまま解け合って
ラテン・アメリカの自由と団結を訴え犯罪と恋を語り
かつて味わったことのない音楽体験を聴き手にもたらす
オムニバス形式の映画的音楽。
川面に揺れる摩天楼の街の灯を思わせる美しすぎるストリングスは
イースト・リヴァーの川幅を遥かに超えて
何処まで行ってもたどり着くことのないマンハッタンを仰ぎ見る
ブルックリンの移民たちの複雑な心持ちを映してあまりに見事。
サルサの枠を超えてヒットを記録した78年の作品です。
ふたりともすっかり肥えた20年後のリユニオン
青年の青臭さはもうどこにも見当たらないけれど楽しそうでなにより。
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by miracle-mule | 2009-01-05 02:32 | アーカイヴス

新年あけましておめでとうございます。

当地は雲ひとつなく晴れ上がり穏やかこの上ないお正月となりました。
こんなお天気でもインドア派の自分はカフェにこもってじっとしている。
今週も伊豆仁田のcafe irodoriさんにておいしいケーキとコーヒーでおしゃべり。
このバナナ・カスタード・パイとirodoriブレンド・コーヒーが
目下至福の組み合わせ。
心がはやって写真がボケてますね。
まだ未体験の方強くお薦めします。

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出がけに近所でこんな光景に出くわしでパチリ。
正月の青空を背にした電線のトンビ。
胸からお腹にかけてのラインが立派です。
目が合って軽く貫禄負け。
視線そらして尻尾巻きつつ車上のひと。

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by miracle-mule | 2009-01-02 22:26 | day after day