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新着案内/サウダージ・アメリカーナ 

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ケネス・パッテンゲイル/ストーリイド・プレイシズ
Kenneth Pattengale / Storied Places

才能というのは恐ろしいもので、
この若者はさきに取り上げたサミー・ウォーカーの
最上の部類に属する曲のレベルを
1、4、5などで易々とクリアして
ウディ・ガスリー、ボブ・デイラン直系のフォーク・ソングを手中にしつつも
過度にシリアスに流れるのを避けようとしてか
2、3では一転リアリズムから離れてトム・ウェイツばりの芝居気で見栄を切り
さらにはオールド・タイミーなポップをやらせたら並ぶ者稀な名人
アンディ・フェアウェザ・ロー(アンプラグドでクラプトンとイギリス版ゴンチチを組んでたひとです)のそそり立つ峰に
快作8で何気に並んで連なってみせる.
他にもジョン・ヘンリー、ライ・クーダー、ヴァン・ダイクなどを連想させる箇所もあって
それらを一枚の布に織り上げる技術と懐の深さには驚き少々あきれもする。
それにしても最近のアメリカの若い才能には郷愁オリエンテッドな人が多い。
疲れているのかな、くたびれたかな若い衆。
でもそのくたびれ具合がいいな。
全曲どれをとっても聴き惚れちゃう。

歌っているのはこんなぼんぼん。

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このスロウなドラムがたまらない。
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by miracle-mule | 2009-02-27 02:29 | 新着CD

ワンダ−3

近所の個人経営の小さなガソリン・スタンドが閉店して
更地になったその跡地。
スタンドの経営者らしきおじいさんが
移動販売車でみかんを販売しています。
50を過ぎた自分の子ども時分にはすでに珍しかった
三輪自動車が骨董趣味ではなくバリバリ現役の働き手でいる様には
ぐっと来るものがありますが
それはそれとしてもの持ちが良いにも程がありましょう。
大抵のものがやって来るとじきに壊れるわが家とどこがどう違うのか
一度訊いてみたいです。
みかんの旗も涙を絞りますね。
エスパルスも知(恵)と汗と涙を絞ってがんばれ!

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by miracle-mule | 2009-02-24 02:07 | 街のバロック

時代遅れ

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サミー・ウォーカー/ブルーリッジ・マウンテン・スカイライン
Sammy Walker /Blue Ridge Mountain Skyline

ギターが控えめにリズムを刻む。
マンドリンがリードをとって曲がはじまり
ベースが静かに滑り込んでくると
鼻の奥で郷愁を誘う香りが漂いはじめ
次いでしわがれてくぐもった歌声が聴こえフィドルが歌い出すと
脳裏に浮かぶのは生まれ育った懐かしき麗しのアパラチアの山々。
なんて、行ったことも見たこともないんだけど。
ないんだけど、こんな曲がかかると
そんな想像上の故郷に向かってハンドルを握る自分をつい想像していい気持ち。
やがてドブロやバンジョー、ボタン・アコーディオンにピアノも加わると
馬車の轍や土ぼこりにさえ心が踊る。
広場では老若男女がうち揃いカントリー・ダンスが始まり
中にはかつて村に置き去りにしたあの娘の姿も..
というのは妄想が過ぎるかな。
アメリカーナの流行りの網からも漏れてしまう類いの極めて地味な音楽だけれど
丁寧に聴けばいつも期待以上のものを返してくれる。
だから30年前よりも10年前よりも今が一番好きな77年の作品です。

76年のセカンドから。
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by miracle-mule | 2009-02-21 21:57 | アーカイヴス

ある日エルサレムで

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エルサレムでの村上さんかっこ良かったあ。
えーっ、賞、いただいちゃうの?と落胆しかけていただけに
うれし涙が出ました、実際。
水丸画伯とエッセイでしょうむないおじさんぶりをさらしたりしていたのは
この日のための布石でしたか。
大石内蔵助みたいです。
周りからいろいろ言われていたけれど徹底して個人的に動かれましたね。
大事な会議の前であっても飲みたい時には飲んじゃう
中川ちゃんも激しく個人的でしたけど。
普段大きな声をあげない頑固者のブレない強さを目の当たりにして
普段声ばかり大きくてブレてばかりいる自分も
九条に何かあった時にはちゃんと動かなくちゃと襟を正しました。
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by miracle-mule | 2009-02-18 13:22 | day after day

新着案内/灰色の輝ける贈り物

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ケリー・ジョー・フェルプス/テューンスミス・レトロフィット
Kelly Joe Phelps / Tunesmith Retrofit

ブルーズ、カントリー、ブルー・グラス、マウンテン・ミュージックなどなど、
土と藁の香り高い米国ルーツ・ミュージックの探求者
なんて言うとかえって敬遠される向きもあるのかな。
現代アメリカ屈指のシンガー・ソングライター、ギタリストの
古くて新しい2006年の傑作です。
例えば三曲目の”スパニッシュ・ハンズ”。
あまりにも無防備に差し出された50男の心の綾に一瞬身がすくみ
やがて自分の胸の奥の特定の場所が深く震えているのに気づく。
時折初期のトム・ウェイツを思わせる瞬間もあるけれど
トムの巧みな自己演出とは無縁のストイックとでも言えそうな姿勢と
ためらいがちなヴォーカルやよく歌うギターが
しまい込まれた聴き手の記憶を呼び覚まし、痛みに触れ
乾いた畑に降る驟雨のように心を濡らす。
起伏を抑えた深い曲想とよく燻された歌声が生み出す世界に震えて欲しい一枚。

アリステア・マクラウドの短編ととてもよく合います。

この一曲だけでも..
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by miracle-mule | 2009-02-14 21:45 | 新着CD

新着案内/pray don't worry

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フリート・フォクシズ/フリート・フォクシズ
Fleet Foxes / Fleet Foxes

頭の中の中世の世界に自分を閉じ込めて
その時代の音楽家として生きて曲を作る。
そんなヴァーチャルな企みと冒険を想像させる曲、音、声にドキドキする。
とは言ってもそこは活劇とは無縁の村祭りののどかさと
静けさに満ちた祈りの世界。
そう云えば願いとも違うし、祈りって何だったろう。
自分を空しゅうすること?
CSN&Yのハーモニーとザ・バンドの佇まいを併せ持った
シアトルの恐るべき若造たち。

若者は山羊とともに
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by miracle-mule | 2009-02-10 02:14 | 新着CD

新着案内/蜜の流れる地へウェルカム?

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ウェルカム・ワゴン/ウェルカム・トゥ・ザ・ウェルカム・ワゴン
The Welcome Wagon /Welcome to the Welcome Wagon

スフィアン・スティーヴンスが全面的にバックアップした
ニューヨークはブルックリン.クイーンズ地区の牧師さん夫婦の音楽ユニット
ウェルカム・ワゴンのデヴュー・アルバムです。
”ウェルカム・ワゴン”というのは新参者に地域の情報を伝えたり
教会活動への道案内などを行う
全米どこにでもあるボランティア活動を指す言葉のようです。
宗派の伝道、布教活動の一環として始まったものなのでしょうか。

”山のてっぺんで神さまはひとりぼっち”
一曲目冒頭のイノセントなか細い歌声は
外に向かって開くことのできない個の閉じた痛みがヒリヒリする。
一方ママス&パパスみたいな60年代ノリ(これがのけぞるかっこよさ)の
二曲目と九曲目はラヴ&ピースなヒッピーの流れを思わせる(夫婦は見た目ヒッピー嫌い風だけど)。
ウェルカム・ワゴンの名の由来を考え合わせると
閉じた個人を閉じたまま受け入れる開かれたコンミューン〜教会の音楽をといったところかな。
日本ではふれあいの一歩手前の状態を求めて
深夜コンビニに向かう人も少なくないという話だけれども
そのもうひとつ踏み込んだ状態を
孤立した個々の間に作り出す役割を担おうとするものかもしれない。
というのは感想というよりそうであって欲しいという妄想。
閉じつつ開いている彼らの持ち味はスフィアンのそれとよく似ていて
寒さと温かさを絶妙なバランスで配置した音作りが素晴らしい。
こんなチャーミングな音楽が聴こえて来る教会ならちょくちょくのぞいてみたい。
と極東の異教徒に思わせた時点でほとんど勝負あったという感じ。

見つめ合うふたりがなんかすごい。
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by miracle-mule | 2009-02-05 00:38 | 新着CD

本に呑まれて その8/そこは地の果て...

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ミカエル・ニエミ/世界の果てのビートルズ

ロックを梃子にした成長物語の
”青春デンデケデケデケ”や”翼はいつまでも”の甘酸っぱさを求めて読んでみたら
ちょっと様子が違って
そこには甘酸っぱさよりはサローヤンの”我が名はアラム”の
フレズノの村や人々を思い起こさせる
滑稽で情けないくらい物哀しいエピソードがパイ状に積み重なっていた。
舞台はスウェーデン北部のフィンランド国境に近い辺境の村。
マグレブやパタゴニアとともに強烈に最果て感の漂う地域です。
このただの田舎では済まされない田舎の少年が
ビートルズに感電したらどうなる。
友だちは、女の子は、大人たちはどう動く。
という以前にここいらの野卑な連中にとって文化って何。
寒い土地、一族、酒、暴力、宗教、共産主義者、思春期とサウナ。
哀しく、滑稽で、痛々しく、どこか歪んだ人々。
ひとの悲哀は他人の目にはいつだって滑稽なものだし
真剣であればあるほど更に可笑しい。
逆に滑稽さは他人の哀れみを誘うし
人生は悲哀と滑稽の反復でできているみたい。

新潮社クレスト・ブックスただ今打率十割。
全部面白い。
装幀もいいし、ページが変色しなければ完璧なのにね。
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by miracle-mule | 2009-02-02 02:20 | 本の棚♦♦棚の本