<   2009年 08月 ( 10 )   > この月の画像一覧

新着案内/落下の愉しみ

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ブライアン・ブレイド/ママ・ローザ
Brian Blade / Mama Rosa

落ちる夢をしばらく見ない。
小さい頃にビルの屋上から落ちかけたことがあって
高いところは怖いし事故や飛び降りの話には足が竦む。
だから落下のイメージは苦手なはずなのに
若い頃によく見た落ちる夢は実に心地良くまた見られる時を心待ちにしていた。
落ち続けるのは間違いないのだけれど何処にぶつかりもしないし
痛い思いもしないので安心して落ちて行けるのだった。
飛行機から崖から樹上からビルの屋上から虚空から。
様々な場所から羽子板の羽のようにくるくる回りながらゆっくりと落下していくのは気持ち良いことこの上なく
どちらかといえば宙を舞っているのに近かった。
これを中年期に入った頃からさっぱり見なくなり
そんな夢を見たことさえ忘れかけていたが
売れっ子ジャズ・ドラマーのシンガー・ソング・ライターとしての
このデビュー・アルバムは
忘れかけたこの夢の手触りを甦らせ、くるくると実に見事に落としてくれる。
70年代初頭のスティーヴン・スティルスを思わせるメロディは
身体ばかりでなく周囲の気温も何度か下降させるようで肌にひんやりと気持ち良い。
ヴォーカルはスティルスよりも淡々としてずっと 穏やか
人柄の反映か、遠赤外線のように体の深いところをほっこり暖める。
落下しつつ体凉やかで中ほっこり。
聴き終えた後に残る何とも言えない和み感は他に比べるものが見当たらない。
ギターとピアノとベースとドラム。
音の彩度を極端に下げるトリートメントを施したほぼ最小限の音響で
影絵のような静かな躍動感と深い陰影を作り出す
ダニエル・ラノワのプロデュースも素晴らしい。
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by miracle-mule | 2009-08-29 19:54 | 新着CD

京都印象派

突然降って湧いた休みを使って京都に行って来ました。
今回の戦果をちょっとご紹介。

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まず気になっていた本を恵文社で何冊か。
小沼丹や稲垣足穂、宮沢賢治など何処でも買えるけど諸々の事情からなかなか踏ん切りのつかなかったものを選んで購入。
優柔不断な者もその気にさせるものがこのお店にはあるみたいです。
京都の街それ自体もそんな感じがするけれど。

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続いて連れあいがお土産を買ったお菓子屋さん、大極殿六角店のかけ紙。
あんまりきれいなので無理を言って譲ってもらいました。

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同じお店のカステラ、もとい「カステイラ」用の包装紙。
これはちょっと言葉を失うデザイン。
生成りのクラフト・エヴィング商會みたいというのが精一杯。
カステイラ、これが重みがあってなかなかおいしかった。

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メインはこれです。
唐長の京からかみ。
微妙精妙さがそのまま和紙に写し取られたような美しさ。
ちょっとしたショック。

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珍しくも立体の登場。
三条通りの「夢見る科学」でみつけたちいさいビーカーとフラスコ。
理科系少年、手遅れなのは承知のうえで最近憧れています。
恵文社の水晶もケチらずに買っておけばよかった。
どの旅行でも帰ってからおのれのケチさ加減を悔やむことになっている。
最後のもったいない世代だから。

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お終いはモーニングがうれしい三条のイノダ・コーヒー本店のペーパー・ナプキンとお手拭き。
これは去年も持ち帰ってなくしてしまった。
もったいない。

女房殿の勢いにどどーんと押されて紙ものに流れた今回の京都行きでありました。
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by miracle-mule | 2009-08-26 01:59 | 俺様くんの宝石さ

本に呑まれて その10/夏の少年

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佐藤雅彦/砂浜

夜ともなれば虫の音も聴こえ、遅れて来た夏もそろそろ仕舞い仕度か。
とはいえ暑さは今が盛りで自分の体温さえも疎ましい。
暑さが年を追うごとにこたえて来る。
夏というのは夏が待ち遠しい少年のものだったのだとつくづく思う。
進歩の無さを自分の中の少年性とすり替えようとしても
夏の暑さを前にすればじきに馬脚を現さずにはいられない。
が、ほとんど地元と言っていい旧戸田村(今は沼津市に編入)を舞台にした
この”砂浜”に触れて大きく波打ったものがある。
鼻の奥の方にもつんと来た。
少年の夏だの夏の少年だのといったものはそう簡単には終わらないとでも言うように。
劇的な事件や展開とはほとんど縁のない少年の日常を淡々と描いて
哀しみと可笑しみは実は同じものだと教えてくれたのは
サローヤンの”我が名はアラム”だったけれど
佐藤雅彦のこの自伝的な作品にも同じ匂いが漂っているようで
長い付き合いになりそうです。。
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by miracle-mule | 2009-08-23 00:20 | 本の棚♦♦棚の本

哀しき裏声

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ザ・コミュナーズ/レッド
The Communards / Red

「年間通してベスト・アルバム選び」さん のアントニー&ザ・ジョンソンズに関する記事を読んでいたら
なんとも聴きたくなってしまったコミュナーズ。
ジミー・ソマーヴィルの
アントニーと似ていないこともない哀しげなファルセットと
ゴージャスさを排したシンプルなエレポップ仕立てのサウンドがあいまって
刹那の楽しみに身を注ぐ遣る瀬なさが鮮やかに描き出される。
存在そのものが哀しげなこのひとがハッピーにしている様子
(Never Can Say Goodbye )を見ると「楽しそうで何より」なんて
こちらも妙にうれしくなって来るから不思議。
できることなら振りを覚えていっしょに踊りたいぞ。
それにしてもジミー、踊りうまいな。
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by miracle-mule | 2009-08-19 02:01 | アーカイヴス

新着案内/震えるくちびる

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メロディ・ガルドー/マイ・オンリー・スリル
Melody Gardot / My One and Only Thrill

PV を見るとけっこう軽やかでドリーミー。
スタイリッシュなところではちらりとかつてのシャーデーを思い浮かべたりもする。
が、歌そのものに耳を傾けると誰もが持っている悲とか苦とかいったものがたちまち共振し始める。
そうした意味で洒落たジャジーな衣装をまとっていてもこれはブルース。
メロディ・ガルドーのこころの奥に沈んでいる哀しみが
こまかに揺れる幾分掠れた歌声を通して聴き手の中に流れ込む。
03や11、03のオーケストラ・ヴァージョンの12といったボサやサンバ風味の希望に溢れる曲も哀しみの照り返しに縁取られていて
はしゃぐことなくしっとりした手触りでアルバムに色を添える。
霧が立ちこめては引いていくような、ストリングスはクラウス・オガーマンかと思えばヴィンス・メンドーサ。
ミックスはオガーマンの盟友アル・シュミット。
プロデューサーのラリー・クラインの頭には
ジョアン・ジルベルトの”アモローソ”あたりがひな形としてあったかもしれない。

これはCDで聴くのがもったいない。
プレーヤーにLPをセットして静かに針を降ろす。
かすかなノイズに続いて絹の手触りのストリングスが流れ出し
次いで現れるの震え気味の声を待つ。
アナログの面倒な手続きそのものをこれほど見事に儀式の愉しみに置き換えてくれそうな作品も稀なのではなかろうか。
LPでの発売を強く希望します。
もうひとつ、英語の響きが他に例がないくらいきれいで聴き取り易い気がするのは何ゆえか。
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by miracle-mule | 2009-08-15 21:04 | 新着CD

死ぬかと思いました。

グラッときて跳ね起き連れあいが起きているのを確認して
階下の娘のところへ駆け下りる。
ここまではとても素早かったのだけれども
普段は大の字でデカデカと寝ている中一の娘、
布団をかぶってもの凄く小さく丸まっているのと
こちらの気が動転しているのとで
目の前にいるのにまったく見えず大声で名前を呼んだ。
「そこにいる」後ろで妻の声がして我に返り娘の上に覆い被さる。
もうダメかもしれない。
恐怖と不安に割り込む感じで、この時は一瞬ただそう思った。
幸い、それをピークに揺れは静まってくれました。
我が家はケガをした者もなく壊れたモノもなくラッキーでした。

東海大地震はこれよりデカイの?
勘弁して。お願いします。

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面置きしたピチカートやコーネリアスが枕元に散乱していた。

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ミケランジェリのモーツァルトもたまらず落下。

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棚から落下寸前のCDたちです。

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娘が5年生の時に作った熊らしきオブジェも墜落。
恐かったけれど家族が散り散りの時でなくて良かった。
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by miracle-mule | 2009-08-12 02:03 | day after day

変形ピクチャー・シングル、ZZトップ篇

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”ラフ・ボーイ”(ダスティ・ヒル、ドラム)

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”ステイジズ”(たぶん立ち位置からするとフランク・ベアード、ベース。好きだと言いながらギターのギボンズと区別がつかない)

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全景を左から見たところ。
右端、肝心要のビリー・ギボンズが欠けている。
半端ぶりに自分らしさが滲み出たコレクション。

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右から見たところ。
誰も誉めてくれないので勝手に威張るこのコーナーに
うら寂しい今日のマテリアルくらいハマる逸品はないかもしれん。

pvが全然見当たらないのでライヴから”レッグズ”を 。
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by miracle-mule | 2009-08-10 11:02 | 俺様くんの宝石さ

花盛り

一年ほど前に紹介したサボテンがいま見頃。
花を纏うとキルヒャー 的凄みが一層増して
なんかもう人格に近いモノを感じます。

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デュワワワッ、デュッワー・・なんて歌声が聴こえて来そう。特に右のふたり。
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by miracle-mule | 2009-08-08 22:08 | 街のバロック

洪水の前に

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カーサル・フライヤーズ/ゴールデン・マイル
Kurssal Flyers / Golden Mile

R&Bコンプレックスのハーパース・ビザールといえば伝わり易いかな。
ただし長い下積みの悲哀が滲み出て
山の手ビザールにはない下町的なぬくもりを醸し出している。
いずれ劣らぬ強面が居並ぶアルバム・カヴァー(ルックス的にはドラマーとベーシストばっかりといった印象)ながら
程よいノスタルジー趣味と中年男の哀愁を極上の洒落っ気で和えた
76年発表のきわめて英国的なポップの傑作です。
オーケストラやSEを導入した大きな展開や仕掛けは
大袈裟ではあっても銭湯のペンキ絵か舞台の書き割りのようで
その腰砕け感がひとなつこくて親しみが持てるし、
フィル・スペクター風の音の壁もパーツは立派だけど
トマソン物件風に立て付けをわざと緩めた感じで
風通しがよく胃にもたれずついついリピート中毒を起こしがち。
歌詞の響きは歯切れがよく、意味以前にまず音としてリズミカルで心地良い。
アウトロとイントロの繋ぎもここしかないってツボをしっかり突いていて
スコンと繋がる気持ち良さは格別です。
手数の少ないストコン・ドラムと憂いというには侘しすぎる歌声とメロディ、
卓越した編集感覚が作り出したこの徒花は
パンクの洪水、爆発前夜にひっそりと
でもその割に濃いめの色あいで咲いていたのだった。
ダン・ヒックス同様決して「おしゃれ」ではないけれど
「洒落た音楽」ってのはこういうもんだという雄弁なお手本じゃなかろうか。
ちょっとうつむき加減ではあるけれど。
ラジオな名曲”ラジオ・ロマンス” を収録。

できればヴォーカルのひとは見ないで歌だけ聴いて欲しい が。

余談になるけれど花開くことなく下積みのまま終わった場合も
これ下積み時代と呼ぶのだろうか..
フライヤーズ、一時でも光が当たってよかった。
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by miracle-mule | 2009-08-05 23:51 | アーカイヴス

マジソン郡の橋?

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沼津と富士の境あたり国1バイパスの南側に見えるこれはいったい何だろう。
光を吸い寄せて離さない極小のブラック・ホールみたいにそこだけいつもぼんやりと薄暗い。
かねがね気になっていた物件を今日はつぶさに観察してみた。

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バイパスからは橋のようにも思えた構造物に添って延びているただの道に見えるのが本物の橋でした。

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近寄ってみると川と放水路の十字路に架かった水門でありました。
川を覗くと大きな鯉がうらやましいくらい悠々と泳いでる。
一度あんな風に悠々をしてみたい。

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観察隊を観察する水浴び犬は笑顔を絶やさず気持ち良さげ。

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鉄の窓が怖い。誰も顏を出さずほっとする。
夜は遠慮したい感じ。

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南側に回って見るとこんな感じ。こちらにも錆ついた鉄のドア。
丁寧に鎖を通して鍵をかけてある。
ドアがあれば鍵があるのは当然だけれどどうやって外すのだろうか。
それ以前に鍵もドアも必要か?
階段がないんですけど。

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出来上がった時に新品だったことが想像し難い堂々たる枯れ具合の逸品でした。
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by miracle-mule | 2009-08-01 22:36 | 街のバロック