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本に呑まれて その11/ぬくぬく

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吉田音/Bolero 世界でいちばん幸せな屋上

もうすっかりバラけてしまったようだけど
ちょっと昔、戦中戦後の飢えもすっかり忘れ
21世紀の貧困など予想もできず
貧乏人も金持ちも同じようにキリンビールを飲み
携帯はなかったけど国鉄があった頃
世間には中産階級というのがありました。
ユーミンが硬派な音楽誌から「中産階級的」なんて揶揄されたりもしていたっけ。
読み終えるとそんな時代の中産階級的ぬくぬく感に隙き間なくくるまれる
そんな後味のお話です。
そのぬくぬくした記憶は時代の荒波に雄々しく立ち向かったり
はしっこく金のなる木を嗅ぎつけるのにはまるで役に立たないけれど
しんどい毎日をなんとかやり過ごしたり大声を出さずにしのいだりするのには
いくらか貢献している気がする。

ラヴェルの”ボレロ”を演奏中のホルン奏者が
曲のクライマックスに登り詰めた瞬間
ー見知らぬ若い五人の男女がアルバイトの休み時間にとあるビルの屋上で
半袖を風にはためかせてタバコを吸っているー
幻を視るシーンと
後日それが一見繋がりの薄い彼らの「幸せな光景」と気付くくだりは
もったいないほどおいしい場面がぎゅうと詰め込まれたこの作品の中でも
ひと際ぬくぬくとして愛おしい。
そういう光景のただ中にいると
その光景に意味があるなどとは露ほども思えず
三十年後ふとしたきっかけで
「あれは幸せな光景だったのだ」と気付くものらしい。
読んでいてその屋上は僕にはこんな風に見えた。
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作品中でテーマ曲になっているのはニール・ヤングの”オンリー・ラヴ.キャン・ブレイク・ユア・ハート”だけど
自分の頭の中ではずっとこの曲 が鳴っていました。
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by miracle-mule | 2010-01-31 01:10 | 本の棚♦♦棚の本

周回遅れ

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今日の今日まで全然そんなつもりはなかったのに
1年間こつこつ貯めたnanacoポイントで
買ってしまった” This Is It".
”ビリー・ジーン”は好きだったけど
持ってるアルバムは”オフ・ザ・ウォール”と
ほとんど聴いてない”デンジャラス”の二枚きり。
特に好きなつもりもなかったマイケルなのに
”スリラー”のVHSは時々押し入れの奥から引っぱり出されるし
”ムーン・ウォーカー”はおめでたくも映画館で観たんだった。
マイケル・ファンだったのかオレ..
ついこの間スコット・ウォーカー好きだったと
四十年遅れで気付いたばかりだというのに
今度はマイケル?
その次はルネ少年?
どうぞジミー・オズモンドだけは来ませんように。
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by miracle-mule | 2010-01-28 02:24 | day after day

atelier-f の新展開

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makani café

夕べはfuuちゃんの新しいお店makani caféの
プレ・オープン・パーティ。
HAPTIC HOUSEさんがこじんまりした空間を
とても親密な感じに仕上げてくれた。
irodoriさんが世話してくれた年期の入った家具も
元からそこにあったみたいに馴染んでいい感じ。
みんなのバックアップでとうとうここまで来たね。
それにしてもここ一二年の新しい友だちが多い多い。
一番古株の我々は黙々と食べるばかりでまったくの役立たず。
でもカブのスープ最高。
まっことうまいき。
30日11時45分オープンね。
是非おでかけください。
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by miracle-mule | 2010-01-24 23:56 | day after day

漂流/境界の音楽

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スコット・ウォーカー / ザ・ドリフト
Scott Walker / The Drift

或る日腹を空かせて凍えながら森の中を歩いていると
熊に出会ったのでこれを殺して空腹を満たし
腹を割いて中に入り込んで夜を明かした。
森は静かだったけれど
熊の中は温かで体液の動く音やガスの生まれる音や
臓器のずれる音で賑やかだった。
また或る日森を歩いていると
腹を空かせた熊が懐かしそうに僕を食べた。
熊の中は胃液が僕を溶かす音や腸のぜん動する音で
やっぱり賑やかなのだった。
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”ザ・ドリフト”の世界は温かい。
不気味と感じられる響きは心と体がまだ不可分な
始まりの場所を編み上げている音そのもののように聴こえる。
読むのではなくその世界を想像的に体験する神話みたいに
聴くのではなくその中に身を投げ込んでしまいたい世界。
”ティルト”で解体された音楽の組織は
酸で溶かされ酵素で断ち切られて一層消化が進み
音楽と非音楽の境い目にぎりぎりまで近づいたように思えるけれど
それがこんなに心地良いのは不思議としか言いようがない。
やっぱりどうしようもなく音楽的。
これが一曲め。一番ポップな”Cossacks Are "
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by miracle-mule | 2010-01-23 02:33 | 新着CD

蜜月世界旅行

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ケルカン / 蜜月世界旅行
Quelqu'un / Mariage! Mariage! Mariage!

木村恵子のヴォーカル、窪田晴男のギター、ピアニカ前田のピアニカ。
音の配置やエコー処理などは考え抜かれているけれど
演奏はどれも奇をてらうことなくシンプルそのもの。
その真っ当さが原曲の良さを際立たせ
余韻が深く長く尾を曵いていつまでも胸に残る。
たとえばこの”アイ・ウィル・ウェイト・フォー・ユー”の頭のピアニカ。
ほんの一小節で首までどっぷりセンチに浸かって
干涸びた心も水気を取り戻し細胞から生き返った気がしてくる。
他にも”ウィル・ユー・マリー・ミー””幸せの黄色いリボン”などセンチな名曲名演満載。
聴いてみるがじゃ。
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by miracle-mule | 2010-01-19 02:36 | アーカイヴス

ハイチ

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カリブ海のイスパニョーラ島の東側三分の二を占めるのがドミニカ。
西側三分の一が今回地震で大きな被害をだしてしまったハイチ。
ドミニカに強烈なダンス音楽メレンゲがあるように
ハイチにもヌムール・ジャン・バチストやミニ・オールスターズ。タブー・コンボでも有名なコンパというのがあります。
派手さや激しさは欠くものの横揺れのリズムに独特の粘りとコクがあって
フランス語の歌との組み合わせがなんともまろやかで典雅なダンス・ミュージック。
美しい自然に負けない極上の音楽が息づくこの国は
残念なことに近年最貧国の過酷さと不幸な政治体制が語られるばかり。
そこへ今回の震災というのはあまりに過酷で気の毒で言葉がない。
被害の甚大さからすると人災の割合も小さくない気がする。
被害が少しでも小さく納まり人々に平安が戻ることを願います。

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それにしても日本の大新聞やテレビの在り方はあまりにもお粗末だ。
死者が万単位にならないと後進国の災害はその他大勢の扱いというのが掟らしい。
アメリカの出来事なら五十人百人でもトップの扱いだろうに。
後進国の人命はアメリカのそれに比べて千分の一、万分の一の価値しかないものらしい。
それをこの国のメディアの連中が決定しているのが無性に腹立たしい。
非対称、不平等は拡大するばかりだ。
あそこにはこんな音楽を作り楽しんでいるひとたちが「実際に」暮らしているというのに。
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by miracle-mule | 2010-01-15 03:37 | その他の中南米

セーターと黒メガネの頃

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スコット・ウォーカーのドキュメンタリーDVD
"30 Century Man"の発売まであと二日。
ビートルズのボックス以上に待ち遠しく
不必要にそわそわしていよいよ挙動が不審になって来た今日この頃です。
PCの背景もこんなになっててしまい
なにやら十代の少女に戻ったような気がします...

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あらためてDVDのカバーを眺めてみる。
黒いセーターを着て赤いマフラーを巻いた見返り美男、黒サングラスの図
ブルーを基調にした背景もつやつやで
ポスターがあったら是非部屋にと思わせる一枚。
昔からサングラスが異様に似合うとは思っていたけれど
セーター姿がまた尋常でなく格好良い。
ヒッピー以前、60年代の中盤は
セーターと黒メガネの時代だったのだ。
この頃の彼が格好良ければ格好酔いほど
美しければ美しいほど
今の彼の老いた姿が胸に迫るって趣向なのだろうか。
ただ老いるのはよいけれど精神を病んでいないか気にかかる。
あまりにダークな近作”ザ・ドリフト”を聴くとちょっと心配。

"ビッグ・ルイーズ”見返り美男の他のショットもちらほら見えます。
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by miracle-mule | 2010-01-13 02:47 | day after day

サニー・アフタヌーン

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フリッパーズ・ギター / カメラ・カメラ・カメラ

えーこちらはexblog-FM、..でへっ..「ラジオ・サニー・アフタヌーン」です。
その場しのぎの思いつきとリクエストで綴るひと時。
第一回はhtさん(53歳男性)のからのお便り。
「『フリッパーズを多感な頃(中学時代?)に聴けた世代が羨ましくない?』と
小沢健二好きの妻が言います。
中学生の頃、彼女はポルナレフに
幾分年上の僕の場合はバカラックに出会っていて
それぞれ十年二十年離れているのだから贅沢を言ってはいけないと言うのですが
女というのは欲が深いですね。
強欲な妻のためにフリッパーズ・ギターの”Camera Camera Camera"をお願いします。」

ううっ優しいご主人。
おお、キュートな曲ですな。
スイートでドリーミーでちょっと意地悪で。
そういえばポルナレフもバカラックも
しっかりフリッパーズの中に染み込んでましたね。
こんな曲を聴いてるとつられてこちらも
htさんの奥方mtさん並みに強欲になりそうで困っちゃうな。
今日はこれまでまた逢う日まで。
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by miracle-mule | 2010-01-11 01:47 | アーカイヴス

ストーリ− 67〜70

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スコット・ウォーカー / イッツ・レイニング・トゥデイ
Scott Walker / It's Raining Today

古いポップスのスタイルから新しいはずのロックに「乗り換える」という選択は
当時のスコットにとって「新しい」やり方ではなかったのかもしれない。
古いポップスの繭の中で
昆虫のように自然に変態するのを待つ方を選んだのかもしれない。
ウォーカー・ブラザーズや初期のソロの作品では
レコード会社のゴリ押しなのだろうがロック以前のポップスにありがちな
ごちゃごちゃと飾りたてたアレンジにときおりたじろぐ。
大袈裟なストリングスと派手なブラス、
大袈裟くらいでは済まないバックの壮大な合唱。
正直かなりつらい曲も中にはある。
が、そうした中にあっても
どうしようもなく惹き付けられる場面はふんだんにある。
例えば”イッツ・レイニング・トゥデイ”のつま弾かれるギターと
その背後で鳴り続けるUFOが発しそうなノイズの絡み。
例えば”モンタギュー・テラス”のストリングス。
反復するストリングスの黙示録的な響きが
クライマックスで唐突に通俗的になって
素知らぬ顔でまた元の響きに帰って行く不思議。
その不思議の向こうにロックでもポップスでもない
スコット・ウォーカーという唯一無二のジャンルが
晴れた日の遠くの島のように驚くほど近くに見えて来るベスト盤です。
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残念ながら音質はAmazonの試聴に完敗。
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by miracle-mule | 2010-01-07 03:01 | アーカイヴス

テイク・ファイヴを聴きながら

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マイケル・フランクス / ランデヴー・イン・リオ
Michael Franks / Rendezvous in Rio

レイト・セヴンティーズのタイム・カプセルを開いたような
まんまあの頃のやわな音に首まで浸かって
すっかりくつろいだお正月。
フュージョン系の音はもともとあまり好まないのだけれど
この人の声が乗っかると途端に輝いてくるから不思議。
組み合わせの妙というものでしょうか。
ここには新しいものはほとんど何もないけれどそのかわり
付き合いの長さから来る癒着というのがあって
作り手と共犯関係に堕ちたようなマンネリの居心地の良さに
ついつい絡めとられて溺れちゃう。
だらだらと来し方行く末を想う寝正月には最適の2006年の作。
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by miracle-mule | 2010-01-03 16:12 | 新着CD