和田誠 村上春樹/ポートレイト・イン・ジャズ
お気づきのように当館にはジャズのコーナーがない。
聴かない訳ではないけれどめったに聴かないしCDの数も少ないので
たいていの作品はあらかたソウルと一緒に
ブラックミュージックのコーナーにつっこんである。
その程度の付き合いなのでジャズを語る資格はまあないわけなのだけれど
春樹さんの書くジャズに関するエッセイ(翻訳ものも含めて)は大好きで
正直最近の彼の小説よりずっと面白く読んでいる。
これは和田誠さんの作品に文章を付けるという形でできあがった本なので
あくまで和田誠主演なのだが
やはり春樹さんの文章がサクサクと美味しい、おいしい。
お茶も欲しいな。
(スコット・フィッツジェラルドとスタン・ゲッツ)「二人の作り出した芸術に、
いくつかの欠点を見いだすことはもちろん可能である。僕はその事実を進んで
認める。しかしそのような瑕疵の代償を払わずして、彼らの美しさの永遠の
刻印が得られることは、おそらくなかっただろう。だからこそ僕は、彼らの
美しさと同時に、彼らの瑕疵をも留保なく深く愛するのだ。」(ここは本文からの引用です)
気持ちに表現がぴったりと寄り添っていて惚れ惚れする。
こういう文章を書くひと、留保なく深く愛してしまう。
思わず連れあいを正座させ読み聞かせを行うなどつい軽挙盲動に及び
恥ずることしきり。
他にもチェット・ベイカー、ジェリー・マリガン、ビリー・ホリデー、
セロニアス・モンクを語ったものなど読んで聞かせたいもの多数。