本に呑まれて その9/スグカエレ

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久世光彦/ニホンゴキトク

向田邦子の文章を読んでいると
おおこれは趣があるなあとかああなんて粋なとため息の出るような
古い言葉や言い回しによくぶつかる。
そうした言葉に出会ったら書き留めておかなくちゃと思いつつ
先を急ぐ読書の悪い癖が出て想いを果たせずにいたのだけれど
向田さんのことを好きでたまらない久世さんが
きちんとまとめて本にしてくれてありました。

世間から用無しの烙印を押されて退場しかかった、
あるいはしてしまった言葉は
ホントに不要なのだろうかという疑問がありましょう?
消えてしまったらホントに住みにくい世の中になるのだろうなという例をこの本から
例えば「気」の付く言葉で拾ってみる。
気落ち、気兼ね、気苦労、気働き、気後れ、気忙しい、気重、気散じ、
気に病む、気がかり、気くたびれ、気がとがめる、気を回す..。
こういう言葉を無くした世の中は野暮なばかりか本音むき出しで世知辛くてもういけない。
他にも杉村春子や沢村貞子が襟元つまんで「おまえさん」に向かって言いそうな
堪え性だの邪見だの昵懇(じっこん)だのといった粋な言葉がぎっしり。
こういう宝物を手前どもの代で無くしたらそれこそ寝覚めが悪い。
伝え聞くところ近頃では想いは告げるものでなく告る(コクる)ものだとか。
その善し悪しを言うつもりはないけど告る想いっていかにも軽そうだ。
個人的にはあられもないおねえちゃんに「告られる」よりは
版画家の山本容子さんなんかに
「じれったいねえ」
なんて科白を背中に投げつけてもらえたらとてもうれしい。
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by miracle-mule | 2009-06-27 01:40 | 本の棚♦♦棚の本
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