アンドリュー・バード/ノーブル・ビースト
Andrew Bird /Noble Beast
鱒釣りから戻り執事にサーヴされてひとり質素な昼食を終えると
お茶の時間までは領地の見回りとフェンスの修理と庭いじり。
なんてイギリスの没落貴族の出かと思っていたら
どうやらシカゴの人らしい。
そうと知っても10センチくらいは床から浮いたまま暮らしてるような
映画”眺めのいい部屋”のダニエル・デイ・ルイスみたいなイメージは
簡単には覆らない。
典雅な歌声と流麗なヴァイオリン・プレイ、テルミンにも水笛にも聴こえる口笛が作り出すのは牧歌的でありながらどこか遠近が壊れたふわふわの奇妙な世界。
聞き流しているうちにそのふわふわにやられていつしか中毒に。
曲が途中でがらりと趣を変えたり、歌う時に口を開けなかったり(どうしてもそんな風に聴こえる)、
真っ先にルーファス・ウェインライトを想い浮かべたけれど
比べるべきはきらびやかに駆け抜けるルーファスよりも
そこで居ながらにぽっかりと歪んでいるスフィアンかもしれない。
ループを使った
ソロ・パフォーマンス も新鮮。
盛んに楽器を持ち替える様子が寄席芸人みたいで楽しい。