ホワイト・アルバムの六曲目に
古いレコードからサンプリングしたようなギターで始まる
ジョンの"
The Continuing Story of Bungalow Bill "って変な曲があって
今さらながらこれが好きでたまらないのだけれども
二分十五秒を過ぎたあたりから聴こえて来る
木管のような手押しオルガンのような不思議な音色がある。
幾度も聴いてきたはずの曲なのに素通りして意識することになかった
その音色は育ち過ぎたオーボエみたいなファゴットのもので
曲のエンディングを飾り"While My Guitar.."へと
ノンストップで繋がるはずなのだが
リマスター盤を聴いていたら頭の中で別の曲が始まってしまった。
それはブラジル音楽音痴の自分としては偏愛と言っても差しつかえないほどに
何というか、愛して止まない”
自分を探してPreciso Me Encontrar ”という
カルトーラ(カンデイア作)の76年の曲で
ファゴットはそこでブラジル的憂鬱とでも呼びたくなるものを体現して
ほぼ全編にわたってほとんど主役を演じているのだった。
カルトーラが"Bungalow Bill.."を参照したのかどうか定かではないけれど
八年の時間とロンドンとリオの距離を越えて
太い幹の洞(うろ)を風が鳴らすようなファゴットの響きが
ふたつの才能、ふたつの名曲の間を吹き抜けている。
ファゴットばかりでなく近年フレンチ・ホルンやバリトン・サックスなど
大きな管を気持ち良く聴いています。