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男子の絵本 その1

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シェーカー通りの人びと/Shaker Lane

という絵本がお気に入りです。
アリス&マーティン・プロベンセン夫妻の手になる作品です。
アメリカの架空の町フォスターのシェーカー通りを舞台にしたお話ですが、
シェーカー通りという名は
家具でも有名なキリスト教徒たちの集会所があったことにちなんでいるとの設定で
案外実体験に基づいたお話かもしれません。
主にワーキング・クラスの人たち(名前からするとオランダ系が多いようです)が
住み着いたこの地区を再開発の波が襲います。
話を盛り上げるような悲劇も抵抗もなく
おなじみの人びとははじめはポツリ、ポツリと
仕舞いには次々と荷物をまとめて出て行きます。
家々は人造湖に沈み
おじいさんひとりがボートハウスに犬たちと残る
というだけのシンプルな話ですが
エドワード・ホッパーとはちょっと違うけれど
彼の描く人びとを連想せずにはいられない住民たちの放心したような無表情、
どこかくたびれたアメリカ的な風景、
ところどころに意図的に置かれた構造的にありえないはずの建物などの
一見プリミティヴな絵が
作品を襞(ひだ)の多い繊細で味わいあるものにしています。
貯水池に家々が沈みかけたシーンなどは
村上春樹の”1973年のピンボール”的とも言えそうだし、
ひとびとの暮らしぶりには
レイモンド・カーヴァーが描いている世界と重なるところもあり
”ショート・カッツ”のように故ロバート・アルトマンが
映画化してくれていれば、と惜しまれます。
マーク・ノップラーの音楽がよく似合います。
登場人物たちの生活を想像して
ジェイムス・テイラーを合わせると
人物が動き出しそうです。
翻訳は江國香織さん。
by miracle-mule | 2007-12-09 02:47 | 本の棚♦♦棚の本
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